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『おはよ~、私はまだ家にいるよ』
『いいなあ、俺なんてもうすぐ駅、でなきゃ間に合わない』
そうだった、類くんの家は学校まで電車で四十分かかるって言ってたもんね。
私は駅までも近いし、電車も十五分くらいだからいつもギリギリ。
朝の電車で偶然会うことは、数える程度しかない。
チラリと時計を見てから、頭の中で慣れない計算をする。
パンの上に残った目玉焼きとサラダをのせたのをムシャムシャと頬張って、コーヒーで流し込む。
急いで歯磨きをして、もう一度鏡の前で髪型のチェックしてから、家を飛び出した。
駅までの道もいつもよりも早足で、なんなら既にもうジョギング、家からウォームアップしてるみたい。
いつもより三十分も早く家を出たんだから全然余裕で間に合うけど、そうじゃないんだ。
いつものより二本早い電車に乗るんだ。
多分、それに類くんは乗ってるはずだから。
どの車両かは、わからないけど偶然同じだったらどうしよう?
合わせてきたな? とか思われたりしないだろうか?
類くんが乗っていてほしいと願う気持ちが半分。
乗ってない方がいいかもしれない、と臆病になってる気持ちが半分。
電車がホームに滑り込んできてドアが開く。
降りる人を待って車両の中ほどに乗り込んだ。
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