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 途中、昼食を取り愛理の自宅マンション前の駐車場へ到着した。  愛理は、緊張した表情で、スマホアプリのWatch quietlyを立ち上げる。その追跡アプリの赤い点は自宅マンションで点滅していた。  そして、意を決したように大きく深呼吸をする。   「ごめんね。すぐに荷物まとめてくるから、車で待っててもらっていい?」 「大丈夫? 祭日で兄キ、家にいるんだろ?」 「だから、家を出ますって、言ってくる」 「一緒に行こうか?」 「荷物取って来るだけだから、ひとりで大丈夫だよ」 「あんまり遅かったら、様子見に行くからね」  心配する翔に愛理は「大丈夫だよ」と言って、マンションのエントランスホールへと歩き出した。    大丈夫と言ったけれど、実のところ、愛理は酷く緊張していた。エレベーターが来るまで、冷たくなった指先を無意識に温めるようにすり合わせてしまう。エレベーターに乗ってからも落ち着かず、階数表示が上がる度にドキドキと心臓の脈動が早くなった。  細い廊下の先にある自宅ドアへ鍵を差し込み、中へ入る。住み慣れたはずの我が家、お気に入りの家具に囲まれた大切な空間だった。それなのに、今は部屋の空気さえ変わってしまったように感じられて、このまま後退りを逃げ出したくなってしまう。  いつもなら、家に帰って直ぐに施錠をするけれど、今日は鍵をかける気持ちにならない。荷物をまとめたらすぐに出るつもりで、ドアを閉めても施錠をしなかった。  愛理が玄関でグズグズしていると、リビングドアのスリガラスが開き、淳が顔を出す。 「お帰り、愛理。あれ!? 髪、切ったんだ」
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