15

2/10
前へ
/222ページ
次へ
 美穂との不倫関係が、バレているとは思っていない淳は、何食わぬ顔で愛理へ声を掛けた。  その普段通りの様子に、愛理の心は余計に傷つき、淳の顔を見るのさえも嫌になる。 「うん、イヤなことがあって、気分転換に髪の毛を切ったの」 「若く見えて、前の髪型より似合っているよ」 「そう、ありがとう」  と抑揚のないトーンで答えて、淳の前を通りすぎ、そそくさと台所へ行きゴミ袋を持ち出す。そして、寝室へ移動した。  寝室に入ると、2台並んだベッドが目につく。  得体の知れない何かがベッドに染み付いているようで、たまらなく気持ち悪く思えた。 愛理は眉間にしわを寄せ、窓を開け放つ。外は秋の冷たい雨が降りしきり、部屋の中にひんやりとした空気が流れ込む。  クローゼットを開け、広げたゴミ袋の中にハンガーが付いたまま、服を丸めては、袋の中へ放り始める。  とにかく、荷物をまとめて、この空間から早く立ち去りたかった。   「何してるんだ⁉」  背中から淳の大きな声が聞こえ、愛理は、ため息交じりに振り返り、淡々と答える。 「もう、淳とは暮らしていけないから、別のところに行こうかと思って……。心当たりあるでしょう? これからは、自分のことは自分でやってね」  その言葉に、淳はカッとなり声を荒らげた。 「なんだよ。出張から帰って来たと思ったら、訳のわからないこと言って! イメチェンして、男でもできたのかよ!」  そう言った淳が愛理へ詰め寄り、手首を強く掴む。 「痛っ! 手を放して……」    
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2246人が本棚に入れています
本棚に追加