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「私の友達と不倫していたんだ……。何を言われても受け入れられない」
「そうか……。しょうがないよな。嫌になったのに無理して一緒に居るなんて辛いし、人生長いもんな」
陽介が理解を示してくれたことに安堵する。その一方で面倒事を押し付けるようで申し訳ないような気持ちになった。
「お父さんに言っているのが聞こえたでしょう。あんな風に言ったけど、中村の家には、この先も仕事の継続を頼んでおくから」
車は高速道路に乗り、街の明かりが流れていく。
「へんな心配させて悪い。父さんの古いやり方じゃダメだよな。俺も自力で頑張ろうと思って、ネットで集客とか考えているんだ。ホームページだけじゃなく、最近じゃ、家を建てる過程をタイムラプスで撮影して、My Tubeに上げてるんだ。それを見た人から問い合わせも来てて、手ごたえを感じている」
「がんばってるんだ」
「1か月で10万再生!」
「すごーい!」と思わず感嘆の声をあげる。
いつまでも子供の頃のイメージが付きまとい、頼りないと思っていた弟も自立した大人になっていた。
「ごめんね。私が親とケンカしちゃって、そのしわ寄せが陽介のところに行きそう」
「父さん、石頭だからな。昭和の負の遺産だよ。今まで姉ちゃんが全部被ってくれていたおかげで、自由にやらせてもらっていたから、少しぐらいなら大丈夫」
「無理して抱えることないんだよ。陽介も自分のための幸せを考えてね」
「なにクサイこと言ってんだ。俺もいつまでも子供じゃないんだから、家のことも何とかやっていくよ。姉ちゃんこそ無理して抱えることないんだ」
「うん」
そう言って、愛理は景色を見るふりをして窓の外へ視線を送る。そうしないと、泣いてしまいそうだったから。
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