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「遊んでいる人って、デートでチョイスする店も気が利いているのよね。エスコートも手慣れているし、慣れていない人だと相手に合うお店より、自分の好きなお店だったりして、当たりハズレも多いのよね」
結婚する気がなく自由な恋愛をしている由香里は、男性経験も豊富だ。
「淳は付き合っていた頃はマメだったけど、結婚したら全然で……。私も学生の頃に適度に遊んで男を見る目を養っておけば良かったのかな。そうしたら、こんな結果にならなかったかも……。今からでも遊んで、男性を見る目養おうかな?」
冗談めかしで言った愛理の言葉に由香里はプッと吹き出し、手をひらひらさせる。
「ムリムリ、あのアプリで日和っているんじゃ、適度に遊ぶとかムリ。淳君で痛い目見たんだし、男を見る目は付いたでしょ! そのうち愛理に合う人が現れるから大丈夫だって。愛理には誠実で包容力がある人が似あっているよ」
誠実で包容力がある人と聞いて、愛理は義弟である翔を思い浮かべてしまう。彼の将来を思えば、義姉であった自分が好きになったらいけない人のような気がしているのに……。
由香里は、まだ笑いが収まらない様子で、お腹を抱えながら目じりに浮かんだ涙を指で拭い、半笑いで話しだした。
「それにおばあちゃんになったら私と暮らすんでしょう⁉」
「そうだ、さっき由香里にプロポーズされたんだ。老後の心配がなくなって心置きなく離婚できるね」
離婚が成立して、今まで起こったことを由香里に話したら、水くさいと笑ってくれるのだろうか。つい、そんなことを考えてしまう。
「そうだ、今度、美穂の婚約パーティーがあるじゃない」
「う、うん」
「婚約だからご祝儀いらないって話だけど、プレゼント用意しようかと思って、ひとりで送るより友人一同の方がいいかなって」
「いいと思うよ」
「佐久良も誘っていいよね。招待状もらったとき、一緒に居たでしょ。声だけかけて、お金は後で徴収すればいいし、連名でかまわないよね」
「うん」
裏切り者の美穂へ婚約祝いのプレゼントを用意する。
普段の自分ならもっと取り乱していたかもしれない。
でも、今は、すごく冷静だ。
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