プロローグ

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プロローグ

 辺り一面に咲き誇る花々に紛れ、世界で一番美しい薔薇が太陽を見上げて笑っている。そよ風に揺られたブロンドの髪に花の冠を乗せ、両手いっぱいに摘んだ花束は一体なにに使うのだろうか。彼女の新緑の瞳にはこの美しい景色だけが映り、俺の存在など微塵も知らないまま、陽の光の下で生きている。手を伸ばせば一瞬にして枯れてしまいそうな薔薇は、それはそれは儚く脆い存在だった。
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