2日目

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

2日目

悲しみに暮れていた夜、変な夢を見た。 「私は記憶を消すことができる。」 と夢の中で語ったあの人は一体誰? つまり私の記憶から、あの人の記憶が 消されちゃったということだろうか。 あんな人、見たこともない。 いや、もうすでに顔も髪型も声もぼやけて 性別すらしっかりと思い出せない。 妙にリアルだったから、少し本気で 考えちゃったけれど、所詮、夢は夢。 記憶を消した?バカバカしい。 そんなこと出来る訳がないのに。 顔を洗って歯磨きをしたら、 もうそんな夢のことなんて忘れてた。 …なのに。 その日の夜、またあの人が夢に出てきた。 “ もしかしたら、って思ったけれど、 やっぱり思い出せなかったみたいね。 ” 「ねぇ、あなたは誰なの?」 “ ここで答えても良いけれど、 あなた自身で思い出す方があなたの為。 頑張って思い出して。 ” 「何よ、それ。 じゃあ、何のために記憶を消して、 何のためにまた私の前に現れたの? しかも何で夢の中なの? あなたは本当は存在しないんじゃない?」 “ …今、たしかに、私はここに存在してる。 例え夢の中だとしても。…違う? ” その人は、悲しげな表情をしていた。 だけど目が覚めればもう、その人の顔も 表情も私は覚えていなくて。 でも、はるか昔から知っているような、 懐かしいような、不思議な気持ち。 夢の中でしか会えないけれど、 きっと私はあの人を知っている。 なのに、思い出せないのは、 やっぱりあの人が持つという “ 記憶を消す力 ”とやらの せいなのだろうか。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!