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2日目
悲しみに暮れていた夜、変な夢を見た。
「私は記憶を消すことができる。」
と夢の中で語ったあの人は一体誰?
つまり私の記憶から、あの人の記憶が
消されちゃったということだろうか。
あんな人、見たこともない。
いや、もうすでに顔も髪型も声もぼやけて
性別すらしっかりと思い出せない。
妙にリアルだったから、少し本気で
考えちゃったけれど、所詮、夢は夢。
記憶を消した?バカバカしい。
そんなこと出来る訳がないのに。
顔を洗って歯磨きをしたら、
もうそんな夢のことなんて忘れてた。
…なのに。
その日の夜、またあの人が夢に出てきた。
“ もしかしたら、って思ったけれど、
やっぱり思い出せなかったみたいね。 ”
「ねぇ、あなたは誰なの?」
“ ここで答えても良いけれど、
あなた自身で思い出す方があなたの為。
頑張って思い出して。 ”
「何よ、それ。
じゃあ、何のために記憶を消して、
何のためにまた私の前に現れたの?
しかも何で夢の中なの?
あなたは本当は存在しないんじゃない?」
“ …今、たしかに、私はここに存在してる。
例え夢の中だとしても。…違う? ”
その人は、悲しげな表情をしていた。
だけど目が覚めればもう、その人の顔も
表情も私は覚えていなくて。
でも、はるか昔から知っているような、
懐かしいような、不思議な気持ち。
夢の中でしか会えないけれど、
きっと私はあの人を知っている。
なのに、思い出せないのは、
やっぱりあの人が持つという
“ 記憶を消す力 ”とやらの
せいなのだろうか。
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