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最終話 170nm≧の生命体には進化する権利がない
それから170億年が流れ、かつてジャッター星系と呼ばれた宙域にある惑星の海中に新たな生命が誕生していた。
極めて原始的な生命体であるそれらは自らを複製する能力を獲得し、いずれは細胞に、そして生物になろうとしている。
(こんにちは! ぼくは水の上にある気体に触れても耐えられるんだよ。ねえねえ、ぼくと融合して一つになろうよ)
(そうなの? わたしは星の光を浴びて有機物を作れるけど……)
原始的なミトコンドリアを獲得した生命体は、広い海の中で別の生命体と融合しようとしていた。
(ところであなた、やけに小さくない?)
(えっ? そりゃあ、ぼくは大きくはないけど……)
その生命体は原始的な膜構造しか持たなかったが、直径はかつての人類の用語で164nmしかなかった。
(いやだわ、そんな小さな生命体と融合したって進化できないじゃない。他の人を誘ってちょうだい)
(あっ、待ってよ……)
原始的な葉緑体を獲得した生命体はそう答えると海を流されていき、164nmの生命体は呆然としていた。
(くそう、ぼくだってもっと進化して大きな生命体になってやるぞ。そうだ、いつかはぼくらが10000000個もつながったぐらい、大きな生命体になるんだ!)
より高度な生命体への進化を目指して、164nmしかない彼は広い海を流されていった。
新たな生命の歴史は今この時、170nm以下から始まるのだ。
(完)
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