第1話 170cm≧の男性には人権がない

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第1話 170cm≧の男性には人権がない

 太陽系第三惑星地球の日本という国に、背の低い男がいた。  その背丈は、32歳にして164cm(センチメートル)。  医科大学で微生物学教室助教として勤務している彼はその日、結婚相手を見つけるために婚活パーティーと呼ばれる催しを訪れていた。 「……へえー、佐竹さんって医大に勤務されてるんですか? というとお医者さん?」 「いえ、医学研究に携わっていますが医師免許は持っていません。ご期待を裏切ってしまい申し訳ないです」 「いえいえ、私別にお医者さん狙ってる訳じゃないので。しがないSEですし」  佐竹という名の男に対して今回最も話が弾んでいた相手は中規模企業でシステムエンジニアを務める29歳の女性だった。  彼女は容姿こそ十人並みだが人柄が良さそうで、30歳を目前にした29歳という年齢からも自分の結婚相手として相応しいと佐竹は判断した。 「あの、良かったら連絡先交換しませんか? また別の機会にもお話したくて」 「それは、まあ、ありがたいんですけど……」  思い切って頼んだ佐竹に女性は意地の悪い笑みを浮かべると、 「私、身長が170センチない人とはお付き合いしたくないんです。何ていうか、人権ないと思うんで。また別の、小さめの人でもいい女性に頼んでください」  一息にそう言って、その場を速足で立ち去った。  心ない発言に傷つけられた佐竹はその足で勤務先の大学へと戻り、微生物学教室の実験室に入ると既に20時を過ぎているにも関わらず器材の準備を始めた。 「今に見ていろ、この僕の力で身長を伸ばす方法を見つけてやる。そうだ、この前調製したあのウイルスを僕自身に感染させれば……」  狂気の研究に手を出した佐竹を止められる者は、もはやこの世のどこにも存在しなかった。
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