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English man in New york
付き合い出して半年ほど経った頃。
芸大の油彩学科に通う鳴海の為に、その日僕はデッサンのモデルのような事をしていた。
「拓、大丈夫?疲れへん?」
鳴海の部屋で椅子に足を組んでポーズを取る僕に、鳴海が労いの言葉を投げかける。
「全然、一時間だっていけそうだよ。」
それに鳴海がFMラジオをかけてくれていたので退屈もしなかった。
・・と思っていたのだけど、ずっと足を組んで椅子に座っていたからどうやら血の巡りが悪くなったらしい。いつの間にか右足の感覚がなくなっている。
「あ、鳴海。ごめん前言撤回。足が痺れてきたかも。」
「ちょっと休憩しよか。そのポーズ覚えといて。」
「えー、無理。」
「拓はコーヒーやんな。」
鳴海が薬缶にコップ二杯分の水をいれて火にかける。
「いや、どっちでも。」
痺れた足を引き摺って後ろから細い身体を抱くと、鳴海が「こら」と言葉だけの抵抗をして、ピクリと肩を震わす。髪の匂いと、シャツの上から伝わる滑らかな肌の感触に僕の中の「男」が思わず昂ってしまい、それを悟られまいと会話をつないだ。
「紅茶、入れるんだったら僕もそれでいいよ。」
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