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約二千発の花火は一瞬だった。夜空から降ってくる炸裂音が体を震わせる程に花火が近くて、その間僕らに余計な会話は必要なかった。
時折、鳴海の方を盗み見ると一心に瞳を輝かせて空を見上げる様がとても魅惑的に見えた。僕の視線に気づいた鳴海と目が合う。ちょっと微笑んで、お互い目のやり場がなくてまた花火を見上げる。幸せな時間。
「喉渇かないの?」
花火が終わると時刻は既に午後の八時。それでも蒸し暑くて喉がカラカラだったから、僕は麦茶のペットボトルを買う。自販機から吐き出されたペットボトルは瞬く間に夏の夜の湿気でびっしりと濡れた。
「ああ、あんまり渇かないんですよ。昔から。」
野球観戦に行った時も鳴海はほとんど何も飲んでいなかった。
もしかしたら・・・公衆トイレに抵抗があるのかも知れない。
と、僕は勝手に想像を巡らす。
人混みではぐれそうになって、僕らは自然に手を繋いだ。すべすべした綺麗な手で、鳴海は照れたように俯いて歩いていた。
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