観覧車の存在意義など、アレしかないだろう

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「そうか?全然わかんないけど。」 「もともと薄い方やから、ほんのちょっとだけですけど。けど拓磨さん、彼女がこんなんやったら嫌やないですか?当たり前やけど胸もないし。」 「別に胸はそんなに・・大きいのが好きなわけでもないし。」 「嘘ぉ、男の人って皆おっぱい星人やないんですか。」 「それは偏見だろ!」 「そんな全力で否定せんでも。てか貧乳通り越してウチ、無乳ですよ。もう壁ですもん、カ・ベ!」    そう言って鳴海が自分の胸をばしばしと叩く。 「むしろいいと思う。」 「出た、変態発言。」 「え、フォローしたのにっ」  なんだこのやり取り。 「肩幅かて吉川晃司ばりにゴツいでしょ。」 「またよくわかんない例えブチ込んだなっ」 「背も高いし手も大きいし」  努めて明るく自虐ネタを話すその声が少し涙声になっていたから、僕は狭いゴンドラの中で鳴海の隣に座り両手を握った。  鳴海の身体がぴくりと反応し、また照れたように俯く。 「そういうのもひっくるめて好きだから。」 「・・ウチなんかのどこがいいんですか。」 —もしかして、泣いてる? 「強いて言えば「いただきます」をちゃんと言うところ・・とか。」 「なんすか、それ。」  わかってる。きっとこれは平坦な恋じゃない。だから僕が腹を括らないといけない。  僕はひときわ力を込めて、ゆっくりと言った。 「僕は君が好きだ。本気で好きだ。  身体の性だとか、そんなことで諦めたら後ですごく後悔すると思う。  だからそばにいて欲しい。恋人として。  もう、君が「うん」と言うまでこの手を離さない。」  無言で握った手のひらは少し汗ばんでいる。  そして暫く僕らは沈黙した。観覧車が下降して、徐々に地上が近づいてくる。      ようやく鳴海が口を開いた。 「・・こんなウチでよかったら、お願いします。」
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