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「これ、ナッコが分けてくれてん。」
ふと、鳴海が小さな瓶に入れられたレモンピールを取り出した。毎年秋ごろになると、成美が祖母の家で取れた檸檬の皮を使って作ってくれるものだ。僕にとっては慣れ親しんだ味だった。
「紅茶に入れても美味しそうだよな。」
瓶のふたを開けて細かく刻まれた檸檬の皮を一つつまんで口に放り込むと、さわやかな酸味と甘みに、果実の皮の心地よい苦みが口の中に広がった。
「あ、ずるい。ウチまだ食べてへんかったのに。」
「あ、ごめん。食べたかった?」
「うん。」
「そっか。」
僕は鳴海を後ろから抱いたままキスをした。
「ちょ、何してんのっ」
慌ててのけ反った鳴海の身体を僕は逃がさない。
「だって、食べたいっていうから。」
もう一度捕まえて、唇を重ねて舌を絡ませた。
酸っぱい檸檬の皮が二人の舌の上で甘く転がされていく。
息が上がって僕の理性があっという間に溶けた。
右手で沸騰した薬缶の火を止めて、鳴海の身体を床に柔らかく押し倒して、二人のシャツのボタンを互いに上から一つずつ丁寧に外していく度に鼓動が速くなる。
僕が鎖骨と肩にキスをして鳴海は激しく喘ぎ、さらに僕の衝動が突き動かされる。
鼓動と息づかい以外、何も聞こえない。
鳴海が僕のベルトを緩めて下着の中に手を差し入れると、僕の性器は濡れていた。
それがとてつもなく恥ずかしかった。
鳴海のひんやりした手が僕のそれを優しく包み込むと、頭の奥が焼き切れるんじゃないかと思うほど僕は興奮し、必死に声を押し殺した。
—拓、ぎゅってして
懇願するように囁く声が耳に届いて、その言葉が耳の奥で甘くバターのように溶けていく中、骨がきしむほどに鳴海の身体を抱きしめて僕は射精した。
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