48人が本棚に入れています
本棚に追加
オトナな彼女
「拓、どうしたん。なんかあった？」
付き合って三年にもなれば、言葉に出さなくても僕の些細な変化がわかるらしい。
鳴海はこういう時、こちらを見ずに声だけで訊く。
十一月の週末、二人で映画館のカフェに入って開演までの時間潰しをしていた時だった。
「まぁ・・仕事のスケジュールがキツくてさ。」
ストレスで胃の調子が悪く、コーヒーにはミルクを入れないと飲めそうにない。
メーカーに就職して三年目。よくある話だけど、僕は仕事で壁にぶつかっていた。
「また例の課長？」
異動で今年から上司になった課長のプレッシャーで参っていることは何度か話してある。
「いや、それもあるんだけど。後輩の子とね。」
さらに、今年度から僕は二期下の新入社員の教育係を任されていた。が、教育係を任されたのが初めてだったことに加え、その新人が女の子だったこともありコミュニケーションの取り方、距離感に僕の方が戸惑っていた。
「拓、まさかその子の事泣かしたん？」
鳴海、鋭いな。
「うーん、トイレで泣いてたかも。僕としては・・そんなに厳しい言い方をしたつもりもなかったんだけど。めちゃくちゃヘコんでた感じで、ちょっとどうしていいかわからないんだ。」
最初のコメントを投稿しよう！