高校教師

13/23
前へ
/23ページ
次へ
「三田先生」職員室に入るなり声をかけられたのであった。女の声だったである。その声のした方を向くと女の教師がこちらを向いていた。 「何でしょう?」たずねると、「私は今年からこの学校で働くことになったものです、よろしくお願いします」と彼女は言った。「これはていねいなあいさつをくださり嬉しいです」と私は答えた。  この職場の人たちはいい人たちが多いな、と私は思ったのである。 「三田さん、能天気だな。いいね」と教頭には言われてしまった。私は教頭には何も言わなかった。声をかけてくれた女には「今年の野球部は強いですよ」と言った。「強いですか?」と彼女は少し何かを考えているような気はした。彼女は何を考えているのかはわからなかったのだ。私にはわからないことは多かったのであった。 「だめだ、こりゃ」と教頭は言って顔をしかめた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加