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「三田先生はたしか高校卒業後すぐに大学に進学しないで働いてから大学に進学したとか聞きましたが」
「そうなんです」
「何をしたのですか?」
「商売をしました」
「どうしてですか?」
「どうしてでしょうね」
「家族の問題ですか?」
「どうしてそんなことを聞くのですか?」
「気分を害しましたか? ごめんなさい」
「いやなんでもないです」
「私は恋を知らないし、でも婚約させられそうです」
「あなたはお嬢様ですか?」
「たいしたことはないです」
「政略結婚かなんかみたいなことですか?」
「私はただ幸せになりたいだけです」
「幸せね」
そんなことを話していると教頭が来た。
「おはよう」教頭はあいさつをした。
私は山田と返事をした。
「三田先生は何の教科を教えるのですか?」
「国語です」
「国語ですか?」
「はい」
「君たち油売っている場合じゃないよ」
「すみません」と彼女は答えて数学の教科書をそろえた。
朝礼だ、と教頭は張り切っているようだった。
私は気がつかれないように含み笑いをした。
「君たち校庭に出なさい」
「はい」と二人で校庭に出た。
外は生徒が並んでいた。校長の長い話があった。校長先生話長いよ、と生徒の一人は声をあげたのが私には聞こえたがほかの先生には聞こえなかったようだった。
「いい話だな」と感動しているらしいのは大学に進学希望しているらしい生徒だった。
校長の話は終わったが、結局なんだったんだ、と言って笑った生徒はいた。とんでももないやつだなと私は思った。
生徒は朝礼が終わると校舎に入った。気がつくと山田は泣いているようだった。校長の話が面白かったのだろうか。
それとも感動したのだろうか?
どちらにせよ感性が強いというか鋭いのだろう。
彼女と目が合った。
「花粉症なのです」と言ったので私はずっこけた。
「花粉症?」と私は気がつくと失笑していた。
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