で、俺が産まれたってわけ

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で、俺が産まれたってわけ

桜咲く4月。新入生が夢のキャンパスライフに目を輝かせる中、大学2年の俺、木瀬麟太郎は、今年度もまた終わらないレポートを消費する1年だと想像していた。 「...めんどくせぇ。」 「余裕を持って終わらせれば済む話だろう。麟太郎。」 「うおっ、吃驚した...脅かすなよ義六。」 相川義六。家が隣で小学校の時からの腐れ縁で、腹立たしいことにイケメンだ。所謂クール系の。まぁ今では親友みたいな仲だが。 「というか...なんでレポートのこと考えてるってわかったんだよ。」 「顔に出てる。」 「にしても普通わかんねぇよ...」 たぶんこいつは超能力者。 「そろそろ講義が始まる。行くぞ。」 「はいはい。わかりましたよー。」 高身長でもイケメンでも特別頭が良い訳では無い。そんな俺にも一つだけ誇れることがある。声だ。俺は自分の声を所謂イケボだと自負してる。 声変わり前の中学生のころ、放送委員だった俺は、毎週給食時間の放送をしていたのだが、声を聞いて惚れたという女子に手紙で告白された。 だが、直接会った俺に向かって「思っていたのと違った」と言ってのけたのだ。酷すぎる。 自分の声が顔と合っていないことは重々承知しているがあまりにも酷すぎる。 まぁ、そういう経験があるから、俺は顔が表に出る場面で声を使うことをやめたのだ。 月日は過ぎて高校2年生の頃、俺は立派なヲタクになっていた。休日はずっとツイチャスに張り付いていて得にカテ主に惹かれた。 顔を出さずに声だけで勝負する度胸。閲覧者のニーズに答えヲタクのツボを確実に突いてくる狡猾さ、自分の特技、好きなことを発信することに憧れを覚えた。 思い立っては即行動。グッズに全振りしてたバイト代とお年玉を配信機材に使った。初めてだけど色々と調べてそれなりに良いものを買った。イラストは...自分で描いた。絵を描くのは得意だったから。話術の本や発声の本も買い漁って読み込んだ。演技の勉強もした。やることはそれなりにやった。 そして現在。俺はイケカテ主としてトップまでのし上がっていた。
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