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「お兄ちゃんと、付き合うことになったの」
後日、彼女はどこか申し訳なさそうな様子で、私にそう告げた。
「よかったな。あんな屈強な彼氏ができたら、誰も言い寄ってこなくなるんじゃない?」
「そうだね……」
彼女は浮かない表情で、曖昧に頷いた。その様子に、苛立ちと愛おしさを感じた。
「あー! これでもう愚痴聞かなくて済むと思うと、清々するよ!」
冗談めかして言うと、漸く彼女の顔に色が戻った。
「もう! どうして匠はそんな言い方しかできないの?」
そして、屈託のない笑顔で、私の髪をぐしゃぐしゃと撫で回した。
私の腕は、彼女を守るには細すぎる。
だから、これで良かった。
なっちゃん、なっちゃん、大好きだったよ。
幸せになってね。栗色の瞳を見つめながら、心の底からそう願った。
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