僕のミア

1/3
前へ
/3ページ
次へ
※※※  僕の一日の始まりは、まず起きてすぐに可愛いペットへ朝の挨拶のキスをすることから始まる。  チュッと軽くリップ音を響かせると、僕は慈愛に満ちた瞳を細めた。 「おはよう、ミア。今日も可愛いね」  そう優しく微笑みながらそっと頭を撫でてやれば、嬉しそうに頭をくねらせて可愛らしい声を上げたミア。  そんな姿を愛おしく思いながらクスリと声を漏らすと、もう一度ミアの頭を優しく撫でてから口を開いた。 「今、朝ご飯用意するからね」  寝起きで頭の冴えない状態のままキッチンへと向かうと、自分の朝食は後回しにしてミアの為の朝ご飯を準備する。  やはり、ペットを飼っているとどうしても自分のことは後回しになってしまう。それ程に、ペットという存在は愛おしい。  正直、ペットを飼っていると旅行にだって行けやしないし、心配で夜遅くまで家を空けることもできない。中々言うことを聞いてくれない躾の時間には、時には骨が折れる程の苦労をさせられることもある。  だけど、ミアはその苦労以上の幸せを僕に与えてくれる。  ミアの面倒を見ることは飼い主である僕にしかできないことだし、飼った責任だって勿論ある。僕の自分勝手な都合でペットとして飼われることになったミアのことを思うと、一生手放す事なく愛情を注いであげなければならない。  それが責任というものだ。 「ほら、ミア。ご飯だよ」    新しい水と食事をキッチンから持ってくると、ミアの足元にお皿を置いてニッコリと微笑む。 「たんとお食べ」  促すようにそっと頭を抑えてやると、足元に置かれた餌の存在に気付いたミアは、嬉しそうに喉を鳴らすとピチャピチャと食べ始めた。  その姿を眺めながら朝の癒しを堪能すると、棚に置かれた時計の針を見て慌てて会社へ行く準備に取りかかる。  昨夜遅くまでミアの躾をしていたせいか寝坊をしてしまった為、どうやら今朝は朝食を食べる余裕はないようだ。  だけど、どんなに寝坊をしようともミアの世話だけは欠かさない。それが、ペットを飼う責任というも。 「それじゃ、行ってくるね。いい子で留守番してるんだよ、ミア」  悲しそうな瞳で僕を見送るミアの姿に心を痛めながらも、仕事を休むわけにもいかずに断腸の思いで自宅を後にする。 (今日は、お土産にミアの好きな魚でも買って帰ろう)  ミアの喜ぶ姿を想像しながらクスリと小さく微笑むと、僕は会社へと向かう足を急がせたのだった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加