第一話。【不運の始まり。或いは伝説の夜明け前】

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第一話。【不運の始まり。或いは伝説の夜明け前】

 アヴァロニア王立魔法魔術学院の朝は早い。  未だ夜も明け切らない、早春の朝である。空気は冷たく、拭く風は過ぎし冬の記憶を思い出させる。  そんな学院内を百数十人からの前途ある学徒及び、学園を管理運営する上級指導師達のお歴々がそれぞれの仕事、それぞれの決められたお勤めに従事している。  1,2年次の、主に第三級魔術師の位階に属する学徒達は、学園の規定に従い幾つかの班に分かれて広大な敷地内の清掃を担当している。  3年次迄に、第二級魔術師認定を受けた学徒達は、この王立魔術学院附属寮の食堂とそれに付随する、畑の管理や家畜の世話、朝食等の準備に従事する。  一部、薬剤学、植物魔法学を専攻する学徒が、特殊な薬草を扱う農園の管理を任されており、それは実習も兼ねた実践的なもので志願者も多いが基本、成績優種者に限られ二級魔術師程度の学徒には狭き門である。  基礎学年最上級である四年次、第一級魔術師認定を受けた学徒及び、指導者を目指す見習い、一応の講師資格を持つ準導師【導級師】とその他、マスターと尊称される導師達はそれぞれ、自身の午前の講義と魔術実験の準備をしている。
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