第一話。【不運の始まり。或いは伝説の夜明け前】

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 実の所、近現代に於ける【魔法・魔術】の需要・研究について、その主流は生活に密着した魔法に移り、特に各種魔法具の研究・制作と食糧生産・医療分野に関係するものが花形であり、既に攻撃系魔術の研究・伝承は斜陽分野となって久しい。  故に1年次に学ぶ基礎攻撃魔術および中級に属する防御・抵抗魔術以外は必須科目から除外されている。  彼女は入学当初、そう言ったいわゆる一般的な総称としての攻撃魔法を率先して学び取り、特に【地・水・火・風】に大別される四大魔術の習得に関して、他者の追随を許さず一年を経て既に、一般学徒レベルを超越し、特に【炎】【雷】系統の習熟と単純な威力は、最上位導師に勝るとも劣らない。  一部、精神面に作用する魔法、薬学他、実践錬金術分野など苦手とするものもあるが、それらは個人的に嫌っているというレベルで、全体的な成績を引き下げる物ではなく、総じて優秀、かなりの腕前である。  そんな彼女を指して、【雷の愛娘】とはよく言ったもので、相当な実力が有りながら何故、第二級魔術師の位階に甘んじているのか。  それはもう一つの渾名に由来する。
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