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建国当時未だ10代であった皇帝も齢六十を超え、老境にある。次の好機が恐らく自らの手で覇道を完遂する、最後の機会となるだろう。
「……ネイアの見解は分かりました。当たらずも遠からず、しかし及第点とはいきませんねえ。所詮は何の証拠もない、ただの憶測。今後の成長に期待すると致しましょうかね」
アルベルトの評価に若干不満げな表情を見せてはいたが、確かに指摘どおり何の証拠もない。閉鎖される孤児院の敷地をどの様に活かして利益を上げるのか。その内容如何によって、次の一手を打つべきであろうと無言のまま、ネイアは思案に入った。
「で、アベル君。君に今一度確認しますが、本当にこちらで住み込みを含めた仕事の斡旋は必要ない、と。そう言うことですね?」
アルベルトは以前、閉鎖の決定を孤児院側に伝えた時、アベルと一度面会をし彼に対して仮の意思確認を取り、後日よく考えて改めて今後の身の振り方を決めることとしていた。
「うん、それで構わないよ」
「ちょっとアベル。それってどう言うことよ? あんた孤児院追い出されて、何かアテでもあるわけ?」
アベルの言葉に、思案中だったネイアが即座に反応する。
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