37人が本棚に入れています
本棚に追加
❀11.❁°˖✧
ゆきは 伸ばされてた慎の右腕に
自分の額をピッタ … と あてて 頭を
支えてもらう …
その 甘えたカンが とても
愛らしく 慎にはカンジられるし
そんなゆきの額からは
ゆきの温かさも伝わってくる …
慎はそのまま …
で 少し その温かさで
落ちつけて …
慎の険しかったその表情も変わり 普段
の 甘く やさしい面持ちが出てくると
空いてる左手で
ゆきの髪をなでてやる …
ゆきは
その手の温かさ 優しい動きに
癒され 嬉しい …
なんだか 胃の痛みも
それで 和らいできた様にカンジられた
それなのに?
慎は 髪をなでていた左手を そっと
離すと その左腕を伸ばし …
ゆっくりと ゆきの 左肩を引き寄せ
右手を ゆきの額にあてて 支え
自分のほうへ ゆきの頭を寄せる …
ゆきは慎の動きが意外で 一瞬
身構えたけど …
コッチの方が
安心し こんどは
自分から口を開いた …
―
「 … うん
あのね …
シンに送って
もらった日だけど …
あの日に 限って?
主人がなぜか居て?
それも 初めて
ワタシを出迎えて …
ワタシ それ 驚いて
だから たぶん?
ダレカ? から聞いて?
って? 思って …
だから怒ってて …
出迎えたくせに
なにも云わないま ま?
書斎に籠って出てこなくて
だからリビングで
ワタシ待ってたけど
来ないままで …
ワタシ 怖く て
書斎にも 行けなくて
待ってた まま
寝ちゃって … したら
朝になってて …
で … いままで
話した事もなかった
うちで働いてくれてる
ヒ ト …
目の前に居て …
朝食用意してくれてて
そのとき ワタシが
自分から頼んだんだけど
たぶん その飲み物に …
たぶん? なにか?
入れられた みたいで …
で? 分んなく なって?
気づいたら 病院
入院して て …」
「 なにか? 入れられた?
のか …? ゆきの話?
" たぶ ん ” ばっかりじゃ
判らないけ ど それ!
大丈夫なのか?」
―
慎は また 眉間に皺が寄る …
その声は 低く 慎の胸にあてられてた
ゆきの右耳には その声が 慎の躰の中
から響いてくるようにカンジる
ゆきは
ちゃんと話さなきゃと思った …
―
「 あ … ごめんね …
病院で 目が覚めたら
喉とか から下?
違和 感? あって …
うん … もしかして?
カラダの中? おなか?
洗浄? されてたかも …
って …
だから?
意識が 戻ったのかな?
って それ も
判んないけど?
じゃなきゃ …
こうなってない …」
―
"… なにしてくれてんだ! … ”
—
再び ゆきが呟いた
" カラダの中? おなか?
洗浄? されてたかも …“
で 一旦 おさまってた?
慎の switchが 入った …
―
「 腹を洗浄?
そんな事! を!
旦那がか!
普通じゃないな!」
「 うん
だから 怖い …」
「 そうだよな!
なぁ! そん!
なんじゃさ!
旦那!
イカレテルだろ …
な! わかった!
も! 危ないもんな!
ゆき 俺から離れるな!
このまま 逃げよう!」
「 え? 逃げるって?
シン? え?
仕事? は?」
「 いいから!
そんなのどうだって!
な! このまま!
俺の処に来ればいい!」
「 でも ワタシ …
シンに逢いたかった
だ け なの …
それだけ考えちゃって
だから 良い の …
ワタシが一緒に居たら
きっと シン に
迷惑 かける の!
シンの仕事 だって …」
「 あの 旦那が?
そんな に? か?
でも! 仕事なんて!
そんなの! 選ばなきゃ
いくらだってあるだろ!」
「 やだ! そんなこと
させられな い …
主人は 強いから!
仕事選ばないって
シンが 言って も …
それだって きっと!
上手くいかないもん …」
「 そんな の
解らない だろ?
それ に … 俺 …
なぁ! 解らないのか?
" 俺のとこ 来い! ”
って!
ゆきが好きだから!
だろ! ゆき だって
俺に!
" 逢いたかった ” って!
だからだろ! なのに?
こんな 目に?
あわされたのに
俺はほっとけないし!
じゃぁ? ゆき は?
戻れるのか? あの家に?
なんでだ? ならなんで
逃げて来たんだ!」
「 え? あ …
それ は …
戻らないけど …」
「 大丈夫 だ! な …
" 旦那が強い ”って
謂ってたって …
そんなの! この辺
だけだろ …」
「・・・・」
―
慎は シートに腰かけたままでも腕や胸
の上体はグラグラ揺れ出し
とてもじゃないけど ゆきは もう 慎
の胸には 寄り掛かって居られないくら
いで どうして善いのか
いっぱいいっぱいになってきた …
―
… ン ンン …
そう? なの?…
善いのかな … このまま
シンと一緒に 逃げて …
でも …
簡単に? 仕事替えるって
やっぱ それ …
簡単に考えちゃ
ダメなんじゃないの?
それに?
それワタシのせいだよね
仕事 シンは あんなに
ちゃんとしてて
成績だって出せてて
優秀なのに
もったいないよ
ね …
なのにこんなに簡単に
なんて …
―
ゆきは自分のシートに戻る様に
慎から離れ 俯いたままになる …
その様子に …
慎は ハッ! と 我に返り?
―
「 もういいよ …
ゆきは
無理しなくていい …
な? もう分ったから
黙ってろ …
いいんだ … な?
ずっと …
辛かった な …」
―
慎は
何事も決めるのが速く …
その口調はすっかり柔らかく
なってきていた …
それに …
また これも らしく?
すぐに 動く …
―
「 お! な?
店! 閉まる前に …」
―
慎は腰を浮かせ 両腕はいったん
ハンドルに戻し …
慎自身は もう 胸が熱くて
いまは
自分も巧くは
なにも云えなさそうだけど
体調の悪いゆきを このまま
いつまでも狭い車のなかに
置いておくのも もう 嫌だったから
ここからも すぐにでも
動くことを決めたかった
そのためには… を
考えたみたいだった
だけど …
—
「・・・・」
—
ゆきは 慎のその動きで車も揺れたから
カラダが グラッと揺れて …
迷いが強いままでも それに驚いて
慎の動きを目で追う
…パタン!
慎はそんなゆきから 目を離したまま
急にせわしく いったん ひとりだけ
で? 車から 出て往き …
…タタタタタタ
その足で スーパーに入ると
しばらく そのまま見えなくなって
消えて?
だから
ゆきは ぼぉ~っと
それも目で追い …
車でひとり 静かに息を吐く
—
… はぁ----
なんかぁ… 疲れた かも …
—
な? 自業自得なことを呟く
これからの方が大変なのに …
それでも やる事も早い
慎は それほどゆきを待たせず …
少し 経ってからくらいに
再び車に戻ると
その手には 零れない様にと
大事そうに 温かい ココアが …
… パタン
甘い香りを漂わせて …
—
「 ほら!
持てるか?」
「 う? ん …」
—
で …
温かいまま
温めたいゆきに持たせる …
—
「 ゆっくり …
それ 飲んでて な …」
—
そうして …
ゆきにはもうなにも …
それに口をつけさせて
喋らせない様に
慎は また でも こんどは?
静かに 車を 動かした …
―
…ひゅ----ん
… ゆきは
そのココアを大事そうに …
しっかりと握りしめ 手のひらから温か
さが伝わってくるのを 嬉しそうに …
ギュッと閉じていた
口が緩むと
一口 … 口に含むと
慎に謂われた通り もう 黙った …
―
車は 慎の住まいへ向かい
慣れた道を静かに進んだ
動く前方を気にして
暫く 黙ってはいたけど …
隣に居ても? ゆきが黙ったままだと
また 心配になってきたのか …
—
「 … どうだ?
少しは
良くなってきたか?」
「 … うん 」
—
ゆきは 温かいまま
ココアを飲めたみたいだった …
—
「 ん … そか …
な?
病院ではちゃんと
寝れてたのか?」
「 …うん だって
なにもされなかったもん
注射も … 点滴も …
だから 寝れた …」
「 ふ! え?
" 寝れた “? のかぁ~!
おいおいなん だ!
ゆき? 図太いな! おまえ
" 怖かった ---! ”
って 言って? それかぁ?
なぁ? しっかりか?
寝てんじゃん! ふっ!
ん‼ なら! いいじゃん♪」
—
慎の声は明るくなった …
—
「 うん…
フフフッ♪
ね? この車
波サンキューでしょ?
シンは海が好きなの?」
「 ん? あ? ナンバーか?
これは 会社の車だから …
でも 俺は島の出身だから
海は好き …」
「 そ? 島の?」
「 うん! 八丈島!」
「 へぇ ----!
いいなぁ!ワタシ
行ったことないけど
良いところだよね!」
—
せっかく話が変わり ゆきも興味を示し
そのまま 良いカンジで展開しそう
だったのに?
慎はアッサリと話を変えた
—
「 ぁあ …
な? この車 あと で
なにげに
俺 駐車場に戻してさ …
キー は モデルに
置いてくるから
ゆき いきなりだけど
留守番 な!
独りだから 大の字で
寝てていいぞ!」
… シン?
ホントに辞めるんだ …
—
ゆきは 慎の考えに もう 意見をする
事もなく 受け身になる …
—
「 うん! きっと
お腹だして
へそ天で寝てる!」
「 ぁあ? なんだぁ?
おまえ仔犬かぁ?
色気ねえなぁ---!」
「 うん!」
—
ゆきは きっと …
ゆきの事だけを考えて
だから …
仕事を辞めるってスグに決めちゃうし
いまだって " ゆきの分だけ ”
ココアを買ってきてくれた …
それほど自分を 思ってくれた
慎に 有難くって 胸がいっぱいに
なって だから もう 平気! みた
いに 少しでも 強がって
安心させた かった …
慎も
荒らされたかもしれない ゆきの
胃に それを保護する様に膜を張れる
温かいココアと 考え たし …
そんな かわいそうな ゆきを
和ませたくて
笑わせたかった …
―
…ひゅ----ん
「 ん? なぁ 腹?
治った か?」
「 うん!
" シンのココア “
美味しかったから!」
「 そか …
良かった …」
―
そうして
こんな慎 と こんなゆきの …
ふたりでの
逃亡? 潜伏生活がスタート?
でも …
やっぱ
準備不足で
いまだって
慎は これから?
ゆきを自分の部屋に置いて
車を戻しに行くなんて
バタバタだろうから
なにかしらは? きっと抜けてて
なら …
警戒心も 足りない?
ま …
何事も決めるのが速い
慎だから そうなった のか?
なんだけど …
それでも …
ふたりは なんだか …
いつのまにか?
思いが 同じ様に 連なって
もう 離れる気はないみたいだから
だから …
ラブラブ生活に?
突入? …
でも それでもそれが
そんなには 続かずに …
最初のコメントを投稿しよう!