逃げる …

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❀11.❁°˖✧ ゆきは 伸ばされてた慎の右腕に 自分の額をピッタ … と あてて 頭を            支えてもらう … その 甘えたカンが とても 愛らしく 慎にはカンジられるし     そんなゆきの額からは     ゆきの温かさも伝わってくる … 慎はそのまま … で 少し その温かさで        落ちつけて … 慎の険しかったその表情も変わり 普段 の 甘く やさしい面持ちが出てくると 空いてる左手で  ゆきの髪をなでてやる …               ゆきは      その手の温かさ 優しい動きに           癒され 嬉しい … なんだか 胃の痛みも それで 和らいできた様にカンジられた            それなのに? 慎は 髪をなでていた左手を そっと 離すと その左腕を伸ばし … ゆっくりと ゆきの 左肩を引き寄せ 右手を ゆきの額にあてて 支え  自分のほうへ ゆきの頭を寄せる …     ゆきは慎の動きが意外で 一瞬             身構えたけど …      コッチの方が            安心し こんどは          自分から口を開いた … ―    「 … うん           あのね …     シンに送って      もらった日だけど …     あの日に 限って?     主人がなぜか居て?        それも 初めて      ワタシを出迎えて …     ワタシ それ 驚いて        だから たぶん?     ダレカ? から聞いて?      って?   思って …     だから怒ってて …          出迎えたくせに     なにも云わないま ま?     書斎に籠って出てこなくて     だからリビングで        ワタシ待ってたけど     来ないままで …        ワタシ 怖く て     書斎にも 行けなくて           待ってた まま     寝ちゃって …  したら     朝になってて …     で …    いままで       話した事もなかった     うちで働いてくれてる             ヒ ト …      目の前に居て …     朝食用意してくれてて     そのとき   ワタシが     自分から頼んだんだけど     たぶん その飲み物に …     たぶん?   なにか?      入れられた みたいで …     で? 分んなく なって?     気づいたら 病院         入院して て …」 「 なにか? 入れられた?   のか …? ゆきの話? " たぶ ん ” ばっかりじゃ  判らないけ ど それ!      大丈夫なのか?」 ― 慎は また 眉間に皺が寄る … その声は 低く 慎の胸にあてられてた ゆきの右耳には その声が 慎の躰の中 から響いてくるようにカンジる               ゆきは      ちゃんと話さなきゃと思った … ―     「 あ … ごめんね …       病院で 目が覚めたら       喉とか から下?       違和 感? あって …       うん … もしかして?       カラダの中? おなか?       洗浄? されてたかも …               って …       だから?       意識が 戻ったのかな?       って それ も           判んないけど?       じゃなきゃ …         こうなってない …」 ―   "… なにしてくれてんだ! … ” — 再び ゆきが呟いた  " カラダの中? おなか?     洗浄? されてたかも …“ で 一旦 おさまってた?  慎の switchが 入った … ― 「 腹を洗浄?   そんな事! を!  旦那がか!  普通じゃないな!」       「 うん         だから 怖い …」 「 そうだよな!  なぁ! そん!  なんじゃさ!   旦那!   イカレテルだろ …  な! わかった!  も! 危ないもんな!  ゆき 俺から離れるな!   このまま 逃げよう!」     「 え? 逃げるって?       シン? え?          仕事? は?」 「 いいから!  そんなのどうだって!  な! このまま!  俺の処に来ればいい!」     「 でも ワタシ …       シンに逢いたかった       だ け    なの …        それだけ考えちゃって       だから 良い の …       ワタシが一緒に居たら       きっと シン に       迷惑 かける の!       シンの仕事 だって …」 「 あの 旦那が?  そんな に? か?  でも! 仕事なんて!  そんなの! 選ばなきゃ  いくらだってあるだろ!」     「 やだ! そんなこと         させられな い …       主人は 強いから!         仕事選ばないって       シンが 言って も …       それだって きっと!       上手くいかないもん …」 「 そんな の  解らない だろ?  それ に … 俺 …  なぁ! 解らないのか? " 俺のとこ 来い! ”          って!  ゆきが好きだから!  だろ! ゆき だって  俺に! " 逢いたかった ” って!  だからだろ! なのに?  こんな 目に?      あわされたのに  俺はほっとけないし!  じゃぁ?  ゆき は?  戻れるのか? あの家に?  なんでだ? ならなんで     逃げて来たんだ!」       「 え?    あ …         それ は …         戻らないけど …」 「 大丈夫 だ! な … " 旦那が強い ”って   謂ってたって …  そんなの! この辺      だけだろ …」            「・・・・」 ― 慎は シートに腰かけたままでも腕や胸 の上体はグラグラ揺れ出し とてもじゃないけど ゆきは もう 慎 の胸には 寄り掛かって居られないくら いで どうして善いのか    いっぱいいっぱいになってきた … ―     … ン ンン …        そう? なの?…       善いのかな … このまま       シンと一緒に 逃げて …   でも …      簡単に? 仕事替えるって      やっぱ それ …      簡単に考えちゃ        ダメなんじゃないの? それに? それワタシのせいだよね 仕事 シンは あんなに     ちゃんとしてて 成績だって出せてて 優秀なのに  もったいないよ ね …       なのにこんなに簡単に               なんて … ―   ゆきは自分のシートに戻る様に   慎から離れ 俯いたままになる … その様子に … 慎は ハッ! と 我に返り? ― 「 もういいよ …   ゆきは  無理しなくていい …  な? もう分ったから  黙ってろ …   いいんだ … な?  ずっと …    辛かった な …」 ― 慎は  何事も決めるのが速く … その口調はすっかり柔らかく なってきていた …         それに … また これも らしく?      すぐに 動く …  ―  「 お! な?    店! 閉まる前に …」 ― 慎は腰を浮かせ 両腕はいったん ハンドルに戻し … 慎自身は もう 胸が熱くて いまは 自分も巧くは  なにも云えなさそうだけど  体調の悪いゆきを このまま いつまでも狭い車のなかに  置いておくのも もう 嫌だったから ここからも すぐにでも 動くことを決めたかった そのためには… を  考えたみたいだった        だけど … —            「・・・・」 — ゆきは 慎のその動きで車も揺れたから      カラダが グラッと揺れて …   迷いが強いままでも それに驚いて          慎の動きを目で追う …パタン! 慎はそんなゆきから 目を離したまま 急にせわしく いったん ひとりだけ で? 車から 出て往き …         …タタタタタタ その足で スーパーに入ると しばらく そのまま見えなくなって           消えて?     だから     ゆきは ぼぉ~っと     それも目で追い …     車でひとり 静かに息を吐く —  … はぁ----    なんかぁ… 疲れた かも … — な? 自業自得なことを呟く  これからの方が大変なのに … それでも やる事も早い 慎は それほどゆきを待たせず … 少し 経ってからくらいに 再び車に戻ると その手には 零れない様にと 大事そうに 温かい ココアが … … パタン 甘い香りを漂わせて … — 「 ほら!   持てるか?」          「 う? ん …」 — で … 温かいまま 温めたいゆきに持たせる … — 「 ゆっくり …   それ 飲んでて な …」 — そうして …  ゆきにはもうなにも … それに口をつけさせて 喋らせない様に  慎は また でも こんどは?    静かに 車を 動かした … ― …ひゅ----ん   … ゆきは      そのココアを大事そうに … しっかりと握りしめ 手のひらから温か さが伝わってくるのを  嬉しそうに …          ギュッと閉じていた              口が緩むと   一口 … 口に含むと   慎に謂われた通り もう 黙った … ― 車は 慎の住まいへ向かい 慣れた道を静かに進んだ 動く前方を気にして 暫く 黙ってはいたけど … 隣に居ても? ゆきが黙ったままだと また 心配になってきたのか … — 「 … どうだ?   少しは  良くなってきたか?」          「 … うん 」 — ゆきは 温かいまま ココアを飲めたみたいだった … — 「 ん … そか …         な?  病院ではちゃんと    寝れてたのか?」    「 …うん だって      なにもされなかったもん      注射も … 点滴も …         だから 寝れた …」 「  ふ!     え?  " 寝れた “? のかぁ~!  おいおいなん だ!   ゆき? 図太いな! おまえ " 怖かった ---! ”  って 言って? それかぁ?  なぁ? しっかりか?  寝てんじゃん!  ふっ!   ん‼ なら! いいじゃん♪」 — 慎の声は明るくなった … —      「 うん…             フフフッ♪       ね? この車       波サンキューでしょ?       シンは海が好きなの?」 「 ん? あ? ナンバーか?  これは 会社の車だから …  でも 俺は島の出身だから         海は好き …」         「 そ? 島の?」 「 うん! 八丈島!」      「 へぇ ----!         いいなぁ!ワタシ        行ったことないけど         良いところだよね!」 — せっかく話が変わり ゆきも興味を示し そのまま 良いカンジで展開しそう だったのに?  慎はアッサリと話を変えた — 「 ぁあ …  な? この車 あと で         なにげに   俺 駐車場に戻してさ …  キー は モデルに      置いてくるから  ゆき いきなりだけど  留守番 な!  独りだから 大の字で      寝てていいぞ!」   … シン?     ホントに辞めるんだ … — ゆきは 慎の考えに もう 意見をする 事もなく 受け身になる … —      「 うん! きっと        お腹だして         へそ天で寝てる!」 「 ぁあ? なんだぁ?  おまえ仔犬かぁ?  色気ねえなぁ---!」           「 うん!」 —          ゆきは きっと …  ゆきの事だけを考えて だから … 仕事を辞めるってスグに決めちゃうし いまだって " ゆきの分だけ ”      ココアを買ってきてくれた …     それほど自分を 思ってくれた  慎に 有難くって 胸がいっぱいに なって だから もう 平気! みた いに 少しでも       強がって        安心させた かった … 慎も  荒らされたかもしれない ゆきの 胃に それを保護する様に膜を張れる 温かいココアと     考え たし … そんな かわいそうな ゆきを  和ませたくて         笑わせたかった … ― …ひゅ----ん 「 ん? なぁ 腹?      治った か?」     「        うん!      " シンのココア “       美味しかったから!」 「 そか …   良かった …」 ― そうして こんな慎 と こんなゆきの … ふたりでの  逃亡? 潜伏生活がスタート?  でも …           やっぱ          準備不足で  いまだって 慎は これから? ゆきを自分の部屋に置いて 車を戻しに行くなんて    バタバタだろうから なにかしらは? きっと抜けてて            なら … 警戒心も 足りない? ま … 何事も決めるのが速い 慎だから そうなった のか? なんだけど …          それでも … ふたりは なんだか …           いつのまにか? 思いが 同じ様に 連なって もう 離れる気はないみたいだから だから …  ラブラブ生活に?           突入? … でも それでもそれが そんなには 続かずに …
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