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❀14.❁°˖✧
「 ね!
も? 帰ろ!」
「 ぁあ …」
―
ゆきは 買い物を切り上げ
部屋に戻りたがった
―
仔犬の温かさがまだ ゆきの掌にも残っ
ている その帰り道
ゆきは
自分の中途半端さに呆れていた
―
… ワタシったら なに
フワフワして るんだろ …
―
それに …
ゆきは なにも準備しないまま 飛び出
した 自分は
なにからなにまで 慎に甘えなければ
なにもできない と 気づいて …
落ち込み 思いは 惑う …
―
… ど し よ …
―
ゆきは 仔犬を抱いて帰れなかった
空っぽの掌をブラブラさせながら
落ち込みはドンドンひどくなり …
ただ俯いて トボトボ 歩いてる
そんな表情は
横に居る慎にだって 見えてるから
慎も 力なく口もとだけで
ほほ笑みを返すくらいになる …
だから それ に こんどは …
慎に気を使わせている と
ゆきは ずっと
並んでいたのに ようやく気づき
こんな暗いカンジ
どうにかしなきゃと …
―
「 ね? ぁ のね …
ワタシ 思い出したけど
毎月 信用金庫の人に
お金預けてて …」
「 ん?」
―
ゆきは
ゆきなりに考えて話したつもり
だったけれど
慎にはまた これもいきなりな話で …
―
「 あのね …
主人が お小遣い?
くれてて ワタシ
使わないから預けてて
毎月30万 で それ!
出せば
良いんだよね?」
「 ん? 30…」
… なんだ それ 小遣いの額か?
は! やりくち汚い仕事で稼いだ金で?
ゆきを縛ってたつもり なのか?…
「 そ なの
横浜の 信金…」
―
主人は月に一度 ワタシの目の前に
一万円札紙幣を 30枚置き
「 今月の分だ … 」と 一言 添える
このお金は ワタシのお金 で
ワタシは 妻だから このお金をもえ
る らしい
でも … このお金は …
ほとんどワタシは
使う 事が無い
生活費は すべて主人が で …
あの家での 管理費 光熱費 上下水道
代に税金 など と ワタシが利用して
いた各家事サービス料金を 主人が毎月
支払っている事は
知っていても
それらの
金額を ワタシは 知らないし
ワタシは 家から離れて 外に 買い
物に行くときは たいてい 主人が一緒
だったから そこでも主人が会計を済ま
せるし
だから
お金は 毎月 家に来る
信用金庫のヒトにゼンブ 渡していて
で … 入金されるのは
ワタシ名義の口座だけど
この信用金庫のヒトは
「 ご主人様に宜しくお伝えください 」
って! ワタシに謂ってた …
―
「 うん … そ か …
でも … ゆき そこの
Card とか?
ないじゃん 」
「 え? だって!
毎月 集金みたいに
ウチに来てて
その担当者に通帳?
とか? ハンコ?
預けてあるの!
だから そのヒトに
連絡して 持って
来てもらえばって!」
「 ゆき …
その人にどうやって
連絡するの?」
「 え? シンの
スマホ 借りて …」
「 は? それで?
俺の番号 アッチに
教えるけど? で?
貸したんなら? ゆきと
一緒にいるって?
なるじゃん!」
「 あ …」
「 それに … 登録
してない番号から
だったら
本人確認できないし
ましてや ほかんとこ?
外に? 金持って
その人 来んの?
おまえ …
少し考えろよ …」
「 … う …」
―
ゆきは 情けなくなって下を向く …
余計な事を云わなければ良いのに 急に
なにもない自分に焦って!
頭の中に出てきたまま 口走った自分が
おそろしく 単純過ぎてて 愚かで
恥ずかしい
―
「 それにその信金は
旦那との 取引
それが目的で旦那寄りだろ
そんなもんだろ …
世の中って …」
―
慎は そんなゆきを相手に 呆れて
ぼやく事しかしない けど
内心は
たとえこの先困っても そんなゆきの
主人の金なんて 使いたくなかった …
―
「 … ごめん
なにもないのが
不安になってきて
ワタシ これじゃ …
シンに甘えるだけで
なにもできないから
って 思って … 」
「 ん?
俺が 逃げよう
って云ったんだから
ゆきの事は
俺がするから!」
「・・・・」
―
ゆきは 黙ってしまい
慎に そう云われても 情けなくて
肯く事もできない
なんだか
ゆきは 自分になにもない
空っぽ状態なのを 自覚した から
ゆきは慎のお荷物と
だんだん
苦しくなってくる …
だから …
慎は 言い切ったから
スッキリした様に
歩いているけど …
ゆきは よけいに のろく
また トボトボしてきて
ところが …
ふたりは
慎の部屋に戻って来たのに
急に 慎の 静止 pose で
ゆきは立ち止まる
―
「 え?」
―
止められた ゆきは
慎の顔を覗き込む
―
「 ん?
お い … 待て …」
―
慎は 玄関ドアに手をかけた途端
動きを止めた
―
「 ねえ? ど
うしたの?」
「 ん … ドアが
開いてる …」
「 ん? やだぁ!
開けっ放し
だったの?」
―
ゆきは 慎を揶揄う様に
大きな声を出し …
慎は それに驚いて
ゆきの口をあいてる片手でふさいだ
―
「 ぐ!」
「 ㇱ … いや
ちゃんと閉めて出たから …
な … ゆき ちょっと
ここで! 中に
入らないで 待ってㇿ 」
―
ゆきは 怖がり
静かになった …
―
「 うん …」
…ぱたん
―
慎は
一人で部屋の中に入って往く
そして
暫くすると
―
「 … ゆき 」
―
静かな部屋の中から
慎は ゆきを呼び
―
「 誰も居ない …
けどさ …」
―
ゆきを見る慎の眉間には皺が寄っていて
ゆきは そんな怖い顔になった慎と一緒
に ゆっくりと慎重に 中に入ると …
… べつに
人気のない静かな空間に
ゆきは キョトンとして …
―
「 … 誰も居な
かったの?」
―
とりあえず
安心したくて慎に訊く
―
「 ん … 居ないみたい
だけ ど さ …
こ れ …
テーブルに …」
―
慎は 一枚の メモ書きの様な小さな
走り書き? の 紙を見せた
そこには …
 ̄
『 ゆき そろそろ
戻りなさい 』
 ̄
の? それ だけが 書かれている
それも わざわざ手書きで? ゆきに
でも 見覚えのある 主人の筆跡で …
—
え!… 主人なの? ここに?
来た の? 部屋に入ったの?…
―
ゆきは顔が引きつる …
慎は
その紙きれをクシャ! っと 丸め!
―
「 テーブルの上にあった
なら 中に入ったんだし
これに
ゆきの名があったんなら
判ってて これだ な …」
「… え?」
―
それを見せられたゆきは 意外にも?
まぁ もう主人は居ないし?
シンと一緒で独りじゃないし?
なら?
強気に? 恐怖よりも怒りが
こみあげてきて …
その " 短!” な
文言の内容に
ゆきは 主人の 余裕? を
カンジて 腹が立つ!
―
「 なにこれ … なんで?
ね! " そろそろ?”
って これ …
や! わかる?
このカンジなの!
ほんと や!」
—
でも
慎は もう 違う事を考えていて
ゆきのこのぼやきを 流す
—
「 あ? そんなの解んない!
な! そんな事後に言え!
いま は 急いでシタクしろ
まだ居たらどうする!
ここ 出るぞ!」
「 え? " 出る? “」
「 ぁあ! ここも
まずい! だろ!」
「 … う? … ん 」
―
そう …
逃亡者 の ふたりには
安らぐ暇もなく …
ゆきと慎は バタバタと 忙しく
それぞれがバッグに 手あたり次第に
選ばないまま なにかしらのモノを
詰め込んで …
—
「 もう …
いい か?」
「 … うん 」
―
… どうして? ここ分かっ て?
どうし て? 主人は中に入れる の?
ドア どうやっ て 開けた の?…
―
ゆきは また 慎に怒られそうだから
よけい な 事は口に出せないけれど
―
… も … クラクラ スる …
―
「 ほら!
早くしろ!」
「 え? はい!」
―
ふたりは 帰って来たばかりなのに
もう 部屋を出た
それでも慎は気遣いができて?
ゆきを不安がらせない様に シッカリと
テツナギをして
周りを気にしながら 走らずに
歩いて
テツナギしてたら まっすぐに歩けない
くらいに 混雑している
川崎駅に入ると
そのひとごみに紛れて
大きなバッグを持っているけれど
旅行者の様に? 楽しそうに …
—
「 おい! ゆき?
ハハハハハ …」
「 やだ! なにワタシ?
なにがおかしいの?」
「 だって ゆき
その服!
裏返しじゃん!」
「 う? そ! え!
シンが急がせるからでしょ!
も! もっと早く教えて!」
「 っく! ワルイ!
俺も今 気づいた!」
「 フフフ♪
なぁんでぇよ---!」
…スタスタスタ…
…トコトコトコ
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