知る …

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❀18.❁°˖✧ 「 お前 なにした?  組合のもんから訊かれたぞ  " 慎は 女と一緒に  帰ってないか “ って!  お前と一緒の     あのヒト 誰なんだ!」   「 俺の …     いや … アイツの嫁さん …」 ―          … え? アイツ?… ―        ゆきは ふと耳に入った 慎が ゆきの主人の事を 自分の伯父さんに " アイツ “ と 謂い? それで通じる事に? 驚き …        その場から動けなくても             そのまま           耳は大きくなって … ― 「 俺の? なら 『 アイツの嫁さん 』?       ってなんだ! " アイツ ” って?  " あちらさんのあの方 ”  だよな! なんで あの方の  嫁さんを連れて? なんだ!  なぁ なんでそんな事した!  組合から謂われるのはな!  大ごと だぞ 分るか?  組合に訊いてきたのは!  動いた役場の方かららしい  もう 関係してるもんが  驚いて!     騒ぎになってるぞ!」           「 ふ~ん 」 「 なんだその態度は!  なんで? そんな事  しでかしたか!  いつまでもあちらさんに  迷惑かけてどうする!  もう   あの方の邪魔をするな!」       「 オジサンには           関係ない!         分からないだろ?」 「 関係ない だと!」    「 どうせ     母さんはもういないし        俺なんて だろ!」 「 なに言ってる!  お前は 俺の大事な  息子みたいなもんだろ!  それに組合のもんは  俺んとこを  心配してくれたんだ  波風立てたら  役場だって 組合だって  で! オレは それじゃ  共同作業場も       使えなくなる!  考えてみろ!  袋詰め 箱詰めだって  できなきゃ 出荷が    できなくなるだろ!」    「 ほら! そんなだろ!            俺より?     亡くなった母さんより?         そっちが大事か!!」  ̄ … ビクン!   え? … なに? どうしたの?   なにを言っているのかが   はやすぎて 聞き取れない …     でも シン? だよね?   なんだか … 怒鳴り声ばかり …   険しい声で? え? ほかに?   誰かいるの? チガウひとみたい … ― ゆきは 玄関先にひとりなのに震えた 耳からはいる2人のやりとりは 烈し過ぎて ゆきは恐ろしくなってきた      まだ 来たばかりなのに? それは いままで浮かれていた     ゆきに罰が当たったように? ここは ふたりの 最終地点の  安楽の場所になるはずだったのに? もう … ゆきには まったく 理解できない ゆきの知らない 慎に? なっていた … ― 「 … まこと!  大人になれ!  あの方は ここでも    力があるんだ …」 ―        ゆきは ずっと待たされ        そこから動けずに 耳には入る 2人の激しいやり取りが ゆきをそのままに放っておいて 2人だけで続く事にも 茫然となる … ―       … ワタシ は …       中に 入れない の?… ― この2人の言い争いは 玄関先のゆきには ハッキリとは聴こえ なくても なにか言い争っている様な             気配は判るし  で? 自分はここに 独り に されてるし              なら? きっと自分の事で 言い争いになっているのだろうから ゆきは自分からは動けないまま        ただ 不安になる … ― これ は … やっぱ …     ワタシ …   シンと 離されてるのなら … やっぱ ワタシ 来ちゃ …         ダメだったの?… ― ゆきは 初対面の伯父さんから       なにも訊かれる事なく? それでこれなら?       ダッタラ? やっぱり  伯父さんは もう ゆきの事を?      何者かわかっていて?  でもそれは おそらく  慎から知らされてはいないから?         なら それは?  誰から なのか と 詮索するしかないけれど その伯父さんはすでに激昂していて いきなり 慎と自分を離したから          それは たぶん          良い方向ではなく           悪い方の事で? なら ここ迄 来てみたものの もう           取り付く島もなく                 絶望と  その知らない事への 恐怖がこみ上げてくる           ゆきは立ち竦み … そして 目のまえが 真っ暗になる ― こんな事になるなんて …       伯父さんがこれなら …          そうなんだ … シンがあんなに急いでいたのは …       これを心配していたの?  ― 蒲田から八丈島に来る事を決めて 1日 飛行機に乗って 1時間? こんなに ここまで 急いで来ても また?  主人の方が 手を打つのが速かったの? シンの伯父さん ここには  ひとり みたい だけ ど これなら きっと  ここのヒトたちも? もう ワタシたちが一緒に居る事          知ってて? それも 主人 から? ここの島のヒト 主人を?  何者か知ってるのかなぁ 主人は こんなに短い間に? 島のヒト       何人のヒト        動かしたの?… ― ゆきの主人は 有名な不動産鑑定士で 国内のどこでも 土地に関する事には絡 んでこれるし  それは 農業用の土地 にだってそうで 都の土地にだって で 八丈島の支庁 役場関係も都の出先機関 でもあるし … これは ゆきの主人がそうさせたのか 周りの者が 気を使いそうしたのか … ゆきの主人は横浜に事務所を構えていて も その事務所には そうした方々も 出入りがあって     繋がっている ゆきは紹介されていないから判らないけ れど 慎の伯父さんは おそらく この 島で農業を営んでいて? 組合とはその関係の方々で … そんな組合から もう ふたりがここに居る事を聴かれたと              なれば … ゆきの主人は  ふたりがまだ来たばかりでも … 慎とゆきのこんなカンジの事も  知っているの かもしれない … それは 伯父さんには 突然すぎるとても迷惑な事で … ―  …バン! 慎は怒りが収まらず まだ ゆきが中に も入ってないから?           玄関まで戻ると  あたる様に自分のバッグを 玄関先に投げつけて それでも     ゆきを おいて? ゆきに背中を向けたまま  ひとりで 出て往った … それは いまの様を ゆきには見られたく     なかったのかもしれない …    そうされたゆきは    それにも なにもできないけれど そのバッグを  大事そうに落ち上げ  着いた土を掃いながら  後を追う様に出てきた  慎の伯父さんは 立ち竦んでいるゆきの方へ          目を移し … ― 「 … 悪かったな  驚かせて …  まことは いまでも  母親を亡くした事    ゆるせないんだ 」      「 … なくした 事?         … ゆるせ ない?」       … どうして …  シンのお母さん の お話 が … ―        ゆきはこのとき        まだ知らなかった … 不思議がるゆきの表情に気づいた伯父 さんは 気の毒そうに ゆきを眺め もうすっかり 落ちついた 穏やかな口調で  けれど やはり なにかを 気にしている様で そのまま ゆきを家の中に入れずに それを許さずに? 玄関先でゆきに話し始めた …
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