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白と黒 …
❀23.❁°˖✧
―
そんな そこ は
日本で一番大きなデべが開発した
横浜のニュータウン
家の敷地は
150坪ほどで 輸入品を多く使用した
家のグレードは高く
セキュリティーも そこ一帯
大手のセキュリティー会社が 24時間
パトロール巡回もしながら 専用の防災
センターも設けて管理してる
家の鍵は電子錠 …
まるで日本じゃないみたい
な …
䨩が その家を購入し そこで生活を
している " 事 ” を この セキュ
リティー会社は シッカリ と
デべから引き継ぎ いつも気にかけ
その家の購入時に 䨩を " 調査済 ”
のこのデべは
䨩がそこに住み続ける事を
自分たちに善い様に意味づけようと …
—
「 こちら お住いの具合は
いかがでしょう …
不具合など お気づきの
事 が 御座いましたら
すぐに 御手直しを
させて戴きますが … 」
「 ん …
ありがとう … 」
—
その会社のお偉いさんの方々が ときに
黒く光るピカピカな車でわが家へお越し
になって 部下ともども 玄関先で
黒い服の主人 と 白い服のワタシに
頭を下げて挨拶をする事 も
何度も ある
そんな …
そこの家はどれも立派で それらの家に
は 凄い車が何台も留められていて …
そこは
このデべに 選ばれた者 だけが
暮らしている …
—
それほど な
そこの方々は " 電車通勤 ” を
必要としない方々で …
お隣 川崎の大手電機メーカーの副社長
さんや 東京国際空港に乗り込む飛行機
が待っているパイロットさん
近くの大学の教授 いつも忙しそう に
世界を駆け巡っている外交官のようなお
仕事をしている N●Kのご主人に
横浜を中心に全国で活躍している弁護士
さん の方々 や …
横浜にチームの本拠地がある
だれでもが知っている
有名な野球選手や
サッカーのプレーヤー とか …
撮影スタジオまでの アクセスも
良いからか ?
名の知れた 男優さんや
放送作家の方々も 居る
そのせいか
そこの宣伝にもなるからか 近所で
ドラマの撮影をしている事も ある
そんな環境の中の生活 では
主人の " 格 ” の ため にも
なにもしない ワタシ …
それでも
" 夜 の 事 ” の ために …
ワタシがこの家の中で 唯一
あわてて動くのは その時 だけ
シャ----------!
今日も 主人が帰ってくる前に その
時間を気にしてシャワーを済ませる …
「 ふぅ------!」
ワタシは 夫のことを ヒトに話す
ときは " 主 人 ” と 口にする
主人は ワタシの ことを ヒトに
話ときは " 妻 “ と 口にする
ワタシは
主人が稼いだお金で生活し
日々のほとんどの時間 その静かな家の
中だけで生活し 主人が帰ってくるのを
いつも 独り なにもしないで 待って
いる
主人の気に障る
余計な事をしないように …
―
そう
その 䨩の強い思いは …
ゆきを妻とし
スタートさせた生活の様も異様にし
かつて …
あの大きな家の中で
隠される様に護られていた
自分だったから …
それが 愛情だと思い
ニギヤカナ場所から離れたそこに
住まいを移し …
自分の家とその周囲のセキュリティを
完璧なものにしたし
若い自分が 苦い思いをした
" 夫婦の寝室 ” は
防音効果もある 壁で囲い 窓を設けず
外からも見えないもの と したし
音を漏らさないため 分厚いドアにも
した …
―
そして … 䨩のゆきへの 思いは …
どこまでも 思慮深く …
けっして 不自由な思いはさせまいと
至れり尽くせり で
ふたりの生活の場では
父がそうしていた様に
ゆきに 家事をおしつける事もなく
自分の事でも煩わせる事もなく
人を雇い ゆきを 解放していた
つもりだったから …
―
… パタン
寝室から出て往く
主人は もちろん 今日も仕事で
ワタシが そのまま 横になったまま
起き上がらないから
独り 朝の身支度を整え
自分で入れた黒いコーヒーを口に含むと
そのカップと 一緒に玄関へ進み
… ゴクっ
!ゥイ---ン
お気に入りの肌触りも良いカップと共に
スポーツタイプの黒い車に乗り込み
ゥイ---ン!
ドゥル ン
ブゥォ ――――ン!
仕事で 出て往く
その 耳障りな地響きするエンジン音も
主人と一緒に動いていた 拡がって漂う
大人なコーヒーの香り も
音の漏れない " 特 注 ” の
ドアが閉められた
寝室のベッドの中に居る
ワタシには
届いてこない
ワタシは そこに独り
「・・・・」
夢の中でも 起きていて も
独りだから ワタシは もう
動かずに なにも 喋らない
そう … 家の中も
ワタシ 独り だから まわりには
なにも物音もしないし ここは静か …
―
䨩は 自分がそうして育てられたから
それが 良い事だと思っていたのか
䨩が創った家でもそうであった
ただ その家では
ゆきが独り なのは
かわいそうだから
だから䨩は
ゆきに仔犬も与えたのだが …
その仔犬は 残念にも
その 死が速く …
その 仔犬の死は
䨩には想定外だったし
 ̄
… それがなければ こんな事には
ならなかったのかもしれない …
—
けれど
それ だけでもなく …
䨩を理解しようとすれば …
その目は ゆきの母にも向かっていて
継母にできなかった 事 の
後悔の思いから
罪滅ぼしの様に?
しっかりと手を差し伸べ …
それは
ゆきから母を奪う事なく
独りぼっちにはさせない と
その母を も
自分にできる すべを使い
ゆきのためにその母も
護ってきたつもりでいた …
でもそれも
䨩は ゆきがその事を負い目の様に
思ってしまっていたとは 知らなかった
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