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❀25.❁°˖✧
それに 聴かされた
伯父さんのお話では …
ゆきの知らない事とはいえ
" あちらのお方 ” と 䨩の
事が出てきて は …
ゆきはもう その妻として
視られているのだから …
勝手に慎との安楽な暮らしのため訪れた
こちらの家には上がる事もできないまま
きっと " 足止め ” された 畑の前で …
だから …
これ以上迷惑をかけまいと
やはり動けなくて
ジッとしていた …
けれど …
頭の中はさっきから忙しい …
 ̄
… 䨩さん が シンの事?
義弟の面倒を見続ける
そんな 思慮深いヒト で …
って … ワタシ …
いままで䨩さん を …
思ってあげられなかったから
ぜんぜん気づけなかった …
そんなんだから
最初から
ワタシ 間違って …
—
… 䨩さん …
ごめんなさい。…
 ̄
そう … ようやく
思える事ができた ゆき …
なのに?
―
…カタン
―
ふわりふわり ゆっくりと
島の風に揺られながら?押されなが
ら やっと? 動き出し …
それでも いま ゆきは
まだ そんな䨩の処には戻らずに?
さっき飛び出していった
慎を捜す様に 後を 追う のか …
小高い丘の方へ向かって …
そんなゆきの様子に
伯父さんも もう 声をかける
事も なかった …
 ̄
「 ねぇ … ワタシ …
ワタシは? シンに
なにをしたらいいの?」
… ちゃんと話さなきゃ …
このままじゃダメだもん …
 ̄
慎に追いついたゆきは
ほかに なにもない
広く 海が見える丘の上 で …
いったん 呼吸を整え …
それでも
慎に してもらった事
助けられた事 護ってもらった事 は
否定できない し!
このままにもしたくない から!
慎と 䨩の 関係が少しは 判っても
事を起こした?
慎を責める気には なれない …
そう ここにも
それも判っているように …
島の 心地よい それは
ゆきに纏わりついた?
よけいな物を剥がしてくれる様に
悪意のない透明な者にしてくれそうな
気持ちの良い風が吹いている
けれど …
 ̄
「 … 聞いたんだろ?
なら もうイイじゃん
俺はどうせ
" シン ” じゃないし
も … 還れば …」
―
慎は せっかく追ってきたゆきに
突き放すことを云う
それでも …
ここで ひとり立ち竦んでいたのなら
ゆきを待っていたかの様にも思えるし?
まわりには なにもないここでは
その寂しそうな ポツン と した姿
から それは にじみ出 て いる …
―
「 … え? 帰る?
… その方が ?
" シン ” も!
あ … そうじゃなくて
… 良い の?」
「 だから そう!
おまえ みてると
イライラする …」
「 え …
そ ぅ …」
… それは
そうかもしれないけれど …
… それが
全部じゃないと思うけど …
… いま は?
シンもちゃんと話せないの か な …
―
ゆきは
そこでも風がカラダにあたって …
ふたりだけ に する様に
慎とゆきを包んでくれて
それは
ゆきの耳のそばでも じゃまな音を
消して くれてても …
急には …
伯父さんからも諭された?
その立場の 大人な?義姉の
様にはなれずに …
そんな慎の辛そうな様子を視ては
また グラグラと 揺れて
時は止まり …
―
やっぱり … ワタシ は?…
でも? 一緒 に …
―
その 気持ちも確かにあるけれど
でも … やっぱり
って なんだか
こんなに 急には
なにもか も は
こんなゆきじゃ で …
だけど それで も …
 ̄
「 …でも ね …
" まことさん ” が
お母さんを
大好きで 大事!
だった様に …
あのひとも ま だ
子供だったし! 早くに
亡くなった自分の
お母さんが ほんとに!
大好きだったんだと思うの
だから
まことさんと 同じ様に …」
「 … おなじ ? な
もんか …
アイツは! ただの!
ワガママなガキのままの!
" 自己愛者 ” だろ! 」
「・・・・」
 ̄
慎は 海の方を見ていたのに
勢いよく振り返り
大人ぶって?
自分に意見 した?
そんな裏切り者の?
ゆきを睨みつけ
鋭く 言葉をかぶせた
それほど?
慎の思いを変えるのは
そんなに簡単じゃなく …
あの頃から もう こんなにも
ときは過ぎているのに…
想いは いまも強く …
ゆきは それにたじろぎ
ゆきの 謂い方が悪くて?
怒らせてしまったから?
なんだか考えも 足りず …
上手くできない不甲斐なさに
自分からの運びの言葉も
もう 出なくなる …
ゆきはうつむいて
唇をギュッと噛締める …
それでも 慎は まだ
その気持ちが治まらないのか …
いま …
慎とゆきは向かい合っていても
そこから お互いが 動かない
慎には距離をおかれたまま で
でも … これ …
ゆきは ほんの 少しの間
離れていただけなのに?
ゆきは …
すっかり
そんな慎の
近くには往けない で …
なら それでも話し続けるのなら …
離れた処から 呼びかける様に …
するしかなくて …
だから それは 慎も で …
だから 大きな声を出すのか …
そんな慎は 烈しい ままで …
―
「 アイツは 俺が
アイツを憎んでるから!
それが嫌で!
部屋を用意したり
職を世話したり で …
自分を良く見せようとする!」
「 … そん な …」
「 だけど! どうだ?
そんな施し 嬉しい か?
上から な 優越感に
アイツひとりで
浸りやがって!」
「 シン …
そんな考えは …」
「 は? " シン ” だぁ?
おまえわかんねーなぁ!
チガウって謂っただろ!
なぁ!
でもそうだったろ?
おまえだって!
思ってたんじゃねぇの?
俺と同じだろ?
" 憐れんでもらって?”
施されて? なぁ!
あんな大きな家に
ただ! ぬくぬくと?
至れり尽くせりで?
それ! ゆきは毎日
楽して! 満足 で?
そこに住んでたのか?
贅沢に で?
物に 満たされてて!
嬉しかったか?
それで
幸せだったのか?
ずっと! 孤独で!
周りに味方もいなくて!
ひとりぼっち! じゃ!
なかったか?! 」
「 … え? ひとり …
幸せ? なん て …
は …」
—
ゆきは 早口でまくしたてられる
その慎の 険しい形相に委縮して …
謂われた事を理解するのにも
これじゃ その勢いに手こずるし
だから 慎と 䨩を 想っても
こんなに烈しい
慎を落ちつかせる?
説得する? そうする様には
できないで いて …
―
「 な? 解るだろ?
ちっとも嬉しくない!
それに!
アイツから与えられて
たのは住むとこだけ
でもない!
俺は な! 優秀な!
営業マンでもないんだ!
俺の客は アイツから
の 紹介 だからな!
ゆきが知ってる
あんときの 成績
数字 だって
" 出せてた ” の は!
アイツから 毎度!
良客 与えられてた
からだ! なのに?
それ! 誇らしいか?
俺は自分で なにも!
してないんだぞ!
だから! 俺は
簡単に! あそこの
仕事を辞めたんだ!
俺 は! ずっと!
あんなとこ!
嫌だったんだ!
な! アイツは 俺を
" なにもできないヤツ ”
と 決めつけて だろ!」
「 … ぇ? ぃ …
あ … 」
—
… " なにもできないヤツ ”
と 決めつけて …
―
だから? …
だから こんな事したの?
… シ ン …
苦し そ う …
ねぇ … でも …
ワタシ も 苦しい よ …
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