お料理上手

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が、娘が生まれると、そうもいかなくなった。 とにかく好き嫌いが酷かった。ピーマンも玉葱も人参もダメ。キャベツやトマトさえ食べない。万能のはずの豆腐も、とにかく大豆とくればダメ。肉好きの2人から生まれたせいか、肉オンリーなのだ。 あたしも外食でネギだのグリーンピースなどを残していた。彼もサラダは全然食べず。 てわけにいかなくなった。大人はどうでも、子どもはやっぱり栄養ってものが。 夫婦でそう話し合ったはいいけど。 先に育休を取ったのはあたし。 今日からあたしはお料理上手。そう言い聞かせて巧みに野菜を隠した料理を研究し始めた。 ハンバーグに人参を擦り入れる。1ミクロンより細かく刻んだ玉葱を溶けるほど炒めてからカレーへ。豆腐はぎゅうぎゅうに水切りしてステーキ仕立て。 食べない。 巧みに隠してもたちどころに見抜く娘、ある意味スゴイ。ていうか、頭に来る。これまで料理をあまりしてこなかったあたしが、育休中は朝昼晩朝昼晩こればかり。 娘がほとんど残したやつを胃袋に流し込む毎日。こんなの、自分が食べたいわけじゃないわ! そのために作ってるわけじゃないわ!!!! 雄叫びを天井にぶつける日が続いた。 しばらくして今度はダンナが育休を取った。 「姫、今日からパパがお料理番だぞ~」 見抜く娘と食べさす気満々のパパとの戦い。 仕事の方が楽、とばかり解放感一杯で出かけたあたし。帰ってみると、天井からダンナの雄叫びが反射してくる気がした。 となるのがわかっていたから、あたし一人外食してくるわけにもいかず、娘用の横に用意された同じ料理を食べたら。 「美味しい!」 てか、慌ただしくて昼を食べそこね、残業中も何もお腹に入れることなく帰ってきたときに。温かい食事がそこにある。それだけで。 「幸せ~♪」 とにかく美味しい。ああ美味しい、と頬張っていたら、横から娘が「ママ、それあたしの」と。 食べた。もう一口。また一口。 ダンナとあたし、手を取って踊ってしまった。 「明日のごはんは何~?」 聞いてみると。 「よおし。パパ特製の焼きそばはどうだ!」 おおお。てか、パパが食べたいやつだな、それ。が、パパのテンションが移ったか、娘もはしゃいだ。あたし、本当はとんかつがいいけど、焼きそばでもいいや。パパ特製、何でも美味しいし。 そのうちに、みんなでメニューを考えるのが楽しみになった。
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