未来に向かって

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診察時間に間に合い、ふたりで待つ。 奈々は、自分の時を思い出し懐かしい。 靖子に連れて来られた事を思い出す。 「福田さんお入り下さい」 「…」 「澪ちゃん?呼ばれたわよ?」 「あっ、福田だった。まだまだ慣れなくて」 診察室に入る。 中には優しそうな女医さんの姿。 「福田澪さん、尿検査では陽性でした。内診をしますので、あちらで下着を脱いで用意して下さいね」 「はい」澪は緊張する。内診をされているのを見る事はあったが、自分がされるのは初めてだ。 内診をする独特の形の椅子。自分の勤務先でなくて良かったと改めて思う。 「力抜いて下さいね」とカーテンの向こうから聞こえる。 そして、下半身には初めての感触。 向けられるモニター。 「福田さん見えますか?ここに赤ちゃんの袋が」 「「あっ」」女医さんと澪の声が被った。 澪も看護師。すぐに気づいた。 「福田さんわかりましたね」 「はい。看護師をしていますので」
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