野菜と煙草と元カノと

　一週間前に受けた検査の結果が分かった。会社の健康診断の再検査だ。……どうやら僕はガンらしい。しかも医者が言うには余命半年だそうだ。ひどいな全く。医者も神様も死神とやらも、随分とヒドイじゃないか。
　いや……医者は悪くないか。医者はひとつも悪くない。もしかしたら神様も、何なら死神も悪くない。いや、もしかしたらとかではなく絶対だ。死神についてはよく分からない。けど神様は絶対悪くない。強いて誰が悪いかと言えば……この僕だろう。いや強いてなんてもんじゃない、悪いのは僕。この僕だ。

　一浪を経て大学入学を機に一人暮らしを始めてこのかた、自分の体を大切にして来た覚えがひとつもない。覚えがないどころか気にも留めて来なかったし、逆に痛めつけて来た気さえする。

　果たして弱冠とつけていいものか、当年とって三十三歳。こんな歳でこんな病気になったのは僕のでたらめな食生活のせいだろうか。おふくろがあれだけ口を酸っぱくして念仏を唱えるみたいに「野菜を食え野菜を食え」と言っていたのに、その念仏は僕の耳を右から左。

　三年付き合った元カノの優香も、インスタント食品やコンビニ弁当や所謂ジャンクフードばかり食っている僕に、顔を合わせればやたらと野菜を食わせようとしていたっけ。