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アルトが目を見開きアリアナを見つめると、アリアナはアルトの両手を握り締め
「大丈夫!アルトなら、立派な皇后様になれるわ!」
などと言ったので、アルトは目の前が真っ暗になった。
(他人のBLは楽しいが、自分がBLするのは話が違う!)
何度も言うが、見た目は若くても中身はアラフィフのアルト。
前世で自分が描いてきたBLの数々が、走馬灯のように流れて行く。
確かに、フランシスはイケメンだ。
眺めている分には幸せだが、恋愛対象では無い!
そもそも、前世時代の自分の推しは病弱で薄幸の美少年ノアだった。
身体は小さく細身で華奢。
その美しさは美のヴィーナスさえも、嫉妬する美しさ。
(それに、どうせBLするなら絶対に自分が攻め!)
アルトは自分の容姿が、ノアに負けず劣らず絶世の美しさなのを棚……いや、高層ビルの上に乗せてそう考えていた。
(フランシスが相手となると、絶対に僕が受けじゃないか!)
問題点はそこでは無いのだが、アルトはそう考えてプルプルと首を横に振り続ける。
「アルト!王家に嫁がなくちゃ、一生、教会の中なのよ! 私とも、一生会えなくなってしまうのですよ!」
目に涙を浮かべるアリアナに、アルトは自分の方が泣きたくなった。
『アルト、良いかい?』
『フランシス様……優しくして下さいね』
大量の真っ赤な薔薇の花が咲き乱れる中、裸体で抱き合うアルトとフランシスを想像して真っ白になる。
「アルト、君を世界一幸せな花嫁にすると誓うよ」
キラッキラの笑顔を浮かべ、フランシスがアルトに微笑み掛ける。
「ま……待ってくれ!そもそも、僕は男だ」
「もちろん知っているよ。でも、きみの美しさは世界中のどんな女性も敵わないよ」
フランシスはアリアナからアルトの右手を奪うと、恭しく手を取りキスをした。
「フランシス様、貴方の后になりたい人はたくさんいます。何も、好き好んで男の僕を選ばなくても……」
苦笑いするアルトに、フランシスは微笑み
「アルト。この世界で、君の代わりなんて何処にも居ない。しかも、太陽の神子となると話は別だ」
そう言って、爽やかな笑顔を浮かべた。
そこでアルトは考えた。
「もしかしたら、何かの間違いだったのかもしれないです!そもそも、僕が太陽の神子なんて」
そう!全ては間違いだった事にすれば良いんじゃね?的な、本当に軽い気持ちで言ってしまったのが運の尽き。
それを聞いていた神官達が
「いくら太陽の神子の言葉だとしても、聞き捨てならぬ!」
と大騒ぎになり、アルトは神官長やフランシス。
そしてアリアナ達が見守る中で、聖なる泉に入る事になってしまったのだ。
(くっ!失言のせいで、思わぬ大騒ぎになってしまった)
アルトが落ち込んでいると、聖なる泉に神官長が現れた。
その美しさに、アルトは思わず声を失う。
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