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「おい!? 来たぞ!」
結論が出ないまま、時は訪れた。
教室の窓から、登校してきた一人の女子生徒の姿が見えた。
彼女の名は、有栖クルミ。
この小説の主人公。
有栖クルミに気づかれる前に、四人は窓越しに姿を見られないよう、サッとしゃがむ。
「おい……どうする……」
「とにかく、有栖さんと顔を合わせないようにするしかないだろ」
モブキャラが名前を得る方法はいくつかあるが、最も簡単なのは有栖クルミによって名前を呼ばれることだ。
かつて、モブAは嬉々として有栖クルミに挨拶をした。
結果、有栖クルミは「おはよう、山田太郎くん」と返答し、モブAは山田太郎となった。
モブキャラで、なくなった。
当時のことを思い出し、四人の背筋が震える。
「そうだな。ストーリーは既に始まっている。今日の舞台は学校の中、学校からは出られない。どうにか、今日のストーリーが終わるまで逃げ回って、有栖さんに見つからないようにするしかない!」
「命がけの学校内鬼ごっこだな! 皆、健闘を祈る! この戦いが終わったら……また会おうぜ! モブキャラとして!」
「おう!」
四人は別れ、学校の中を走った。
有栖クルミが見つけられないだろう場所へ。
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