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『幸せそうね。羨ましいわ・・・邪魔したくなるぐらい。』
「勝手に伶菜をそっちの病院に引き抜くの、やめて下さいね。」
『引き抜いたの、そっちでしょ?伶菜ちゃんはウチで従事するはずだったのに。』
伶菜ちゃんは日詠クンの奥さんであり、臨床心理士でもある。
出生前診断方法がより簡便にできるようになってきている今、
遺伝相談の担い手の一人として産婦人科領域での活躍も期待されている。
そんな彼女が従事してくれるように最初に働きかけたのがウチの病院だったのに、
「・・・そういえばそうでしたっけ。」
この男はあの手この手を尽くして伶菜ちゃんをさっさと自分の病院にかっさらって行った。
『そろそろウチの病院に返してよね。伶菜ちゃんを。育児休暇明けでいいからさ。』
「ダメです。俺の・・・ですから。」
『・・“俺の・・・ですから”って?・・・伶菜ちゃんはそう思ってるのかな?』
「・・・・・・・・」
『ちょっと、情けない顔しないでよ。』
大学時代はどれだけの女の子を泣かせたかわからないモテ男の彼
しかも、その女の子達にも“彼が悪いのではなく自分の魅力が足りなかった”と言わせてしまう不思議な男だった
その彼がわき目もふらずに一途になる相手の伶菜ちゃんは
日詠クンのことを密かにスキだと想っていたあたしも
彼女には敵わないと認めざるをえなかったぐらいの魅力的な女性
伶菜ちゃんと日詠クンは
まだふたりが幼かった頃に日詠クンの家庭の事情で
兄妹みたいに一緒に暮らしていたことがある
でも、再び元の生活に戻ることで
生き別れてしまった彼女のことを
日詠クンはずっと想い続けていた
だからその他多数の女の子達に対して彼が不思議な男だったのは
きっと彼女の影響なんだと思う
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