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『真夜中にあの森村クンが普段じゃあり得ない優しい言葉とか囁いたら、そのギャップにコロリといっちゃうかもね~』
「・・・・・・・・・・」
黙ったままの日詠クン。
多分、頭の中はモヤモヤ感でいっぱいなんだろう
ざまぁみろ!
あたしを含め
多くの女の子を泣かせたんだから
少しは悩めっての
チン♪
心の中が真っ黒なあたしと
頭の中が真っ青な日詠クンの乗せたエレベーターが地上階へ着いた。
前にいた人達の流れに乗るようにエレベーターを降りたあたし達。
人の流れに導かれるように地下鉄の改札のほうへ向かっている途中、日詠クンは着ている紺色のダッフルコートのポケットからおもむろに携帯電話を取り出しどこかに電話をかけた。
『深夜に2時間だけ家に帰るなんて、必死すぎて笑える。』
「本当は子供達が起きている時間帯に帰りたかったんですけど、どうしてもその時間帯は抜けられなくて。」
本当は森村クンの深夜訪問を阻止しようとしているんでしょ?と突っ込みたかったけれど、睨まれそうでやめた。
最近のあたしは
こうやって日詠クンとのやり取りを楽しんでいる。
これぐらいならきっと
伶菜ちゃんも許してくれるとわかっているから。
『クリスマスなんて、あたし達みたいにカレンダーとか関係のない仕事をしている人間には、面倒だよね~』
「・・・・・・そんなこと、言わないで下さい。」
『へ~、やっぱり子供がいると行事とかイベントとか大事になるもの?』
「まあ、そうですけど・・・・奥野さんこそ面倒に思うとガッカリする人がいるんじゃないんですか?」
『なんのことよ?』
「こっそりと楽しみにしている人がいるかもしれませんよ。奥野さんの近くに。」
他人に対して、特に恋愛話とはについては全然興味がなさそうな日詠クンがそんなことを言うなんて正直驚いた。
しかも
日詠クンのことがスキという想いが
まだ完全に吹っ切れていないから
正直、複雑・・・・
『いないわよ、あたしは仕事が恋人!』
「・・・・・相変わらずカッコいいですね、奥野さんは。」
そう言ってから、大きな溜息をついた日詠クンは
もしかしたらこの時、勘付いてもしれない。
勤務予定でビッシリ埋まっているだけの
あたしのクリスマスイヴがどうなるのか・・を・・・
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