【Okuno side 1:好きでい続けた人の予言】

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【Okuno side 1:好きでい続けた人の予言】

【Okuno side 1: 好きでい続けた人の予言】 日詠クンと参加した産婦人科系研究会から3日経った。 あたしはいつもと変わることなく仕事をしていた。 場所は手術室。 『ハイ、そろそろベビー出てくるから。NICU(新生児集中治療室)ドクターを呼んで!』 「もうコールしてます。」 『さすが、ウチのナースは仕事が早いわ。』 「奥野先生の仕事ぶりは充分承知しておりますから。」 妊娠高血圧症候群に罹患している妊婦さんの帝王切開手術中のあたし。 胎児の体重はまだ2500gに達していなかったが、母体の著しい血圧上昇状態がおさまる気配がなかったため、正産期前に帝王切開にて出産することにした。 「NICUです。」 『その声は・・・・ちょうど良かった。もう出るわよ。』 ほぎゃ・・ほぎゃ・・・ 「ベビーは大丈夫そうですね。抱っこ、どうします?」 『母体の血圧が不安定だから、また落ち着いてからで。』 「ベビーの声も小さそうなんで、とりあえずNICUにお連れします。」 『よろしく。』 「了解です。お母さんも頑張って下さい!」 私からそっと手渡したベビーを大切そうに受け取ったその人は、 ハクハクと息の上がった産婦さんにベビーの顔を見せながら声をかけた後手術室から立ち去った。 『さ、縫合。バイタル、気をつけて見ていてね。』 「ハイ。」 この時のあたしもいつも通りサクサクと自分のすべき仕事に取り組んだ。 手術は成功し、産婦さんの血圧も落ち着いた。 『疲れたな~、今日で勤務何日目だろう?って、しかも今日は何曜日?』 月が鮮やかに輝く今が夜であることぐらいしか把握していないあたしは屋上のベンチに腰掛け、両手でブラックコーヒーの入ったコップを抱えながら大きく息をついた。 吐いた白い息が漂うことによって、より一層寒さを感じる。 スクラブの上に羽織った白衣の身衣を抱きしめるように寄せても大して変わらなかった。 『あ~、寒いし、そろそろ病棟に戻ったほうがいいよね・・・』 今がいったい何時なのかを確認するためにスクラブ(手術着)のポケットからスマホを取り出した。 辺りが暗いこともあり、ディスプレイの照明を照らそうと電源ボタンを押した。 その瞬間、 「12月23日午後8時24分です。曜日は木曜日。」 左手に持っていたスマホをするりと抜き取られた。
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