【introduction】

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【introduction】

【introduction】 『あ~終わったぁ。』 「奥野さん、お疲れ様でした。」 『日詠クンはもう単位更新した?』 「今日ので、なんとか50単位に届くはずです。」 名古屋駅近くに建設されて間もない高層ビル。 午後9時過ぎ。 ようやく終わった産婦人科系研修会の会場を後にして ガラス張りのエレベーターに乗った瞬間に見えたのは 数々のLED照明で鮮やかに彩られる名古屋駅の壁面。 視線を下方へずらすと、そこには数多くのが若い男女がいて 光輝く駅の壁面を楽しそうに眺めたり写真を取ったりしている。 寒い冬の夜だけれど、その周辺は少し浮ついているように見えた。 『あ~、この前、学会発表もしてたもんね。』 「もしかして奥野さん、まだ単位取り終えていないんですか?」 研修会帰りで少し高いところにいるあたし達は そういう雰囲気とは少し離れた場所にいるようだ。 『うん・・ウチの病院、産婦人科医師の産休ラッシュで人手不足に拍車がかかっていて、今日もその中を掻い潜ってようやく研究会に参加できたぐらいだから。』 「ウチの病院も似たようなモンですよ。」 産婦人科医師の日詠クン。 大学時代からの後輩で、今はウチの姉妹病院である名古屋南桜総合病院で従事している。 あたしもその病院に数年前まで従事していて、彼と一緒に働いていた。 腕がいいだけでなく、多忙な中、新しい治療法などにも積極的に取り組み、この辺りじゃ、患者さん達だけでなく同業者の間でも名が知れ渡っている彼。 『どこも似たようなもんだよね。でも、日詠クン、充実してそうな顔してる。』 「そう見えますか?」
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