4 魔法学園と青い春

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 4ー9 片付けですか?  ロナードは、分厚い黒ぶちメガネをかけた色が抜けたような薄汚れた金髪の小柄な少年だった。  後で知ったのだが、これでももう12才なのだという。  いや、俺と同い年くらいかと思ったぞ。  「ところで、この部屋の状態は?」  俺がひきつった笑顔できくとロナードは、へへっと笑った。  「僕は、ちょっと片付けが苦手なんだ。昔から、よく家族に言われたもんだよ。ちゃんと片付けろってね。君、悪いけど、使うところだけ片付けて使ってくれるか?」  マジですか?  なんでもこれまでは誰も彼と同室になるものがいなかったらしく1人でこの部屋を使っていたらしい。  俺は、この世の終わりにでも出会ったようなため息をついた。  これは、まずは掃除からだな。  とにかく、この部屋の異臭をなんとかしなくては!  俺は、足場を確保しながら窓へと近づいていくとそれを開け放った。  爽やかな風が吹き込んでくる。  「さて、と」  俺は、部屋の中へと向き直ると気合いを入れた。  これは、一代事業だぞ!  俺は、手当たり次第に片っ端からゴミとガラクタを空間収納へと取り込んでいった。  「何?君、もしかして空間魔法が使えるの?すごいな」  ロナードは、他人事のように言っているが俺は、彼を無視してゴミを片付けていった。  数時間後、なんとかあらかた部屋のガラクタを片付け終わると今度は本の山を空間収納へ取り込んでいく。  すると、ロナードが慌てて俺にしがみついてきた。  「おい!その本は、ゴミじゃないぞ!」  「わかってるって」  俺は、どんどん取り込んでいきながら答えた。  「必要な本を言ってくれればそれを出すから」  「マジで?」  ロナードが半信半疑で俺にきいた。  「じゃあ、『黒魔術大全』は?」  「ほい」  俺がぽん、とその本を取り出してみせるとロナードは、不承不承だったが俺が本を片付けることを了承した。  夕方ごろには、なんとか床の面が見えてきた。  俺は、空間収納からバケツと箒と雑巾を取り出すと部屋の掃除を始めた。  リリウスが夕食の誘いに来るまでには、なんとか人の住める場所になっていた。  俺は、リリウスとロナードと一緒に食堂へと向かった。  この寮には今王族は、ライディアとライディアの2番目の兄がいるらしいが、彼らはそれぞれの部屋で食事をとるらしい。  食堂は、混雑していた。  何十人もの少年がずらっと並んだテーブルのそれぞれの席についていた。  ざわめきの中、俺はロナードの隣に、リリウスは俺の隣に腰を下ろした。  リリウスの同居人は、まだ帰ってきていないらしく席が一つ空いている。  
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