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4ー10 謎の肉ですか?
「みな、揃っていますか?」
食堂の前方に黒いローブを着た若い男が進み出ると拡声器のような魔道具を使ってみんなを黙らせる。
「それではみなさん、神と女神に今夜の糧を感謝しつつおあがりなさい」
テーブルの上には、冷めきったスープと固いパン、それに何の肉だか怪しいような塊が数個のった皿が並べられていた。
「ちなみに、これは、謎の肉と呼ばれている」
ロナードが俺に囁いた。
「噂では、魔物の森に住むゴブリンをここの料理長が狩ってきているらしい」
「マジで?」
俺が驚くとロナードがくっくっと笑った。
「冗談だよ、たぶん」
たぶん?
俺は、力なく笑った。
たぶんって、なんだよ?
俺は、その肉をフォークでつついた。
ちらっと隣を見るとリリウスが肉を口に放り込んでいた。
そのままリリウスは、5分くらい肉をくちゃくちゃと咀嚼していたが覚悟を決めてごくんと飲み下した。
俺は、肉はやめておこう、と心に誓った。
食事の後、部屋に戻るとすぐに俺は、風呂にいこうとロナードを誘った。
ロナードは、俺の誘いをのらりくらりとかわそうとした。
だが、俺は、硬い意志のもとロナードを風呂に連れていこうと決めていた。
「あんた、ちょっと臭うぞ、ロナード」
俺は、きっぱりくっきり言ってやった。
「何日、風呂に入ってないんだ?」
「失礼な!」
ロナードがプンスカ怒って言い返してきた。
「これでも僕は、キレイ好きなほうなんだぞ!風呂だって一週間に1度は入ってるし」
はい?
「一週間?」
俺は、絶句した。
これは、なんとしてもロナードを風呂に入れなくては!
俺は、なんとかロナードを風呂に連れていこうとした。
すると、ロナードは、しぶしぶ応じた。
「風呂に入ってやってもいい」
ロナードは、俺に交換条件を出してきた。
「その代わりお前の尻尾を見せてほしい。というか触らしてほしい」
はい?
俺は、フリーズした。
何言ってるの?
尻尾は、亜人にとっての性感帯だ。
そんなもの、他人にむやみに触らせたりできないだろ!
「断る!」
俺が言うとロナードがにっと笑った。
「じゃあ、俺も風呂には入らない」
「ちっ!」
俺は、舌打ちした。
「ちょっとだけだぞ!」
俺は、尻尾をロナードの方へと差し出した。
ロナードがにやっと笑うと尻尾をさわさわと触ってくる。
うわっ!
俺は、ぞわぞわしていた。
なんか、キモッ!
俺は、ぞわぞわしながらも堪えていた。
「すごいな、もっとザラザラしてるのかと思ったけど、意外とツルツルだな」
ロナードが言いながら尻尾を撫でる。
背筋がぞっとする!
「もういいだろ!」
「もう少しだけ!」
そう言ってロナードは、俺の尻尾を思いきり引っ張りやがった。
俺は、声にならない悲鳴をあげた。
「あれ?トカゲの尻尾みたいに切れるのかと思ったのに切れないな」
「あたりまえだ!」
俺は、ロナードから尻尾を取り戻すと涙目でロナードを睨み付けた。
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