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4ー12 共犯ですか?
「どちらかと言うと俺は、お礼を言われるべきなんじゃないかと思うんだけど」
俺が不満げに言うとロナードは、ぷいっとそっぽを向いて脱衣場からさっさと出ていってしまった。
なんか、マイペースというか、勝手というか。
俺は、ため息をついてから服を身に付けると脱衣場から出て部屋へと戻った。
部屋まで戻ると、部屋の前にリリウスが待っていた。
「リリウス?」
俺が声をかけるとリリウスが途方にくれたような顔をして俺を見た。
「クロ、どうしよう」
はい?
俺は、リリウスを部屋へと招き入れて話をきくことにした。
リリウスが言うことによると、リリウスの同居人である人物がいまだに部屋に戻ってこないのだという。
マジですか?
もうすぐ消灯の時間だぞ。
この寮にはルールがあってその内の一つが消灯時間に寮長が見回りに来たときに部屋にいないといけないというものだった。
もし違反したら、罰則があるのだという。
「もしかして俺のこと嫌で戻ってこないんじゃ」
リリウスがらしくないことを言うので俺が否定しようとしたら、それよりも先にロナードの奴がバカにしたように笑った。
「ルウシエの奴のことなら君を嫌っているんじゃないだろ。あいつは、寮の部屋からの脱走の常習者だからな」
「ええっ?」
俺とリリウスは、顔を見合わせた。
脱走の常習者?
ロナードは、俺たちの驚いているのを見て満足そうに続けた。
「ルウシエは、鍛冶職人になりたがっている変わり者だ。そして、このアルディスでも最も腕がいいと言われている鍛冶職人のもとに無理やり弟子入りして毎日そこに通っているんだ。だから、帰りも遅いし、時には朝帰りなんてことだってある」
マジでか?
俺たち学生じゃねぇの?
俺がそう問いかけようとするとロナードがふん、と鼻で笑った。
「奴なら心配しなくっても朝までには帰ってくるさ」
「でも、鍛冶職人に弟子入りしてるならなんで魔法学園なんかに入学してるんだ?」
リリウスの問いにロナードが答えた。
「ルウシエの家は、このアナトリア公国内でも5本の指に入るぐらいの名家でね。奴の親は奴が将来宮廷騎士団に入団することを望んでいるんだ」
「でも、学校さぼって鍛冶職人に弟子入りしてるならダメじゃん」
俺が言うと、ロナードが不機嫌そうに応じた。
「奴は、成績だけはよくってな」
そうなの?
成績が良ければ、そういうの許されるんだ?
俺が不審げにしているとロナードがにっと笑った。
「もちろん、協力者はいるわけだけどな」
あ、たぶん、こいつが一枚噛んでるな。
俺は、ロナードの腹黒そうな笑みにひいていた。
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