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5ー4 『月の花園』
学期末のテストを無難に乗り切った俺たちは、夏季休暇に突入した。
俺とリリウスとエディットは、もちろんトカゲの谷に帰郷することにしたのだが、ライディアも俺たちと一緒にトカゲの谷へと行ってみたいとか言い出した。
俺は、トカゲの谷はとても王族を迎えることができるような所ではないと主張したんだがライディアは譲らなかった。
仕方ないので、ラダクリフ辺境伯の許可がでたらと言ったら、あっさりと許可されてしまったので俺たちは、全員一緒にライドウの荷馬車に乗り込んで帰路につくことになった。
「ライディア様をこんな荷馬車にお乗せするなんて!」
とライドウは言って恐縮したがライディアは、どうしても俺たちと同じようにしてトカゲの谷へと行きたいと言うものだから仕方がない。
ライドウは、荷馬車にふかふかのクッションを敷き詰めライディアを乗せることにした。
俺たちとはまったく待遇が違うのな!
まあ、しょうがないかな。
なにしろ本物の王子様だからな。
しがないトカゲたちとは違うというものだ。
うん。
別に根になんて持ってないし。
ところで俺たちは、トカゲの谷に帰郷する前にちょっとだけ寄り道をしてもらうことにした。
例の俺がプロデュースしたカフェに行ってみようということになったのだ。
この俺がプロデュースしてココの親父さんとライドウが共同出資して始めたカフェの名前は、『月の花園』といった。
何、その名前?
俺は、ちょっと笑ってしまったが、エディットは、マジで気に入ったらしい。
「素敵な名前ですわね!」
彼女は、そう言って瞳を輝かせていた。
まあ、それならそれでいいんだが。
このカフェには、俺が考える女子の喜びそうなものをすべてぎゅっと詰め込んでいるからな。
深い森の奥にある妖精たちの住む秘密の家というコンセプトの山小屋風の店の作りに、妖精のメイドさんという感じのウエイトレスさんの制服。
ここは、女子のための夢の国なのだ。
そして、美味しいお茶とお菓子でのおもてなし。
エディットは、シフォンケーキを一口食べるとうっとりとした表情を浮かべた。
「このお菓子、口の中で溶けてなくなってしまいます。すっごく美味しいです!」
エディットがほうっと吐息をついた。
「まるで夢の中にでてくるお菓子のようです」
俺は、俺たちを店まで案内してくれたライドウの方を見てにっと笑った。
店内は、アルディスの夢見る乙女たちでいっぱいだった。
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