124人が本棚に入れています
本棚に追加
5ー6 トカゲの谷の村ですか?
俺は、後でライドウにきいて知ったんだが、ライディアの母さんは、プロフェナールさんの姉さんだったのらしい。
なんでも王城に招かれたさいに王にみそめられ嫁がれたのだとか。
俺たちは、お茶とお菓子を堪能すると店を後にした。
そして、いよいよライドウの荷馬車に乗り込むと首都を出発した。
まず、俺たちを乗せた荷馬車は、マリージアを目指してすすんでいった。
馬車で3日かかる行程をライドウは、4日かけてゆっくりと進んだ。
途中の町で宿をとって休んだりしつつ俺たちは、マリージアへと向かった。
マリージアでは、ライドウの家に泊めてもらった。
ライドウの奥さんのマリーナさんと生まれたばかりの娘さんであるララちゃんが俺たちを迎えてくれた。
ララちゃんは、マリーナさんに似てとても美人さんだったが、耳は、父親であるライドウと同じ犬耳だった。
「まあ、なんて可愛らしいのかしら」
エディットは、ララちゃんを抱くとその額に口づけした。
その瞬間、優しい光がララちゃんを包み込んだ。
マジで、うちのエディットは聖女なのか?
魔法学園でも光属性の力を持っているということで教師たちをざわつかせているしな。
俺は、エディットが聖女でないことを祈っているんだが。
もしも万が一、エディットが聖女なら勇者のもとに送られ、勇者と共に魔王と戦わなくてはならなくなる。
そうなれば、もうトカゲの谷には戻れなくなるだろう。
クローディア母さんが悲しむし、もちろん、俺だって寂しい。
俺たちは、その夜はいつものようにライドウの家に泊めてもらうと次の日には、マリージアを出てトカゲの谷へと向かった。
本当は、ラダクリフ辺境伯はライディアに護衛の騎士をつけたがったのだがライディアがそれを拒んだ。
「護衛は必要ない」
確かに、下手な騎士より俺たちの方が強いけどな。
ライドウは、街道を荷馬車で行くと途中で森へと入っていった。
森の中は、道の回りには魔物よけの結界が張られているのでしんと静まり返っている。
しばらく森の中を進んでいくと開けた場所に出た。
切り立った崖に俺が造ったエレベーターがあり、ライドウは、それに乗り込んだ。
エレベーターは、5分ほどで下の森へと到着した。
下の森を抜けると青々とした麦畑や田んぼが拡がっている。
いくつもの風車が道なりにたっているのを見ながら俺たちは、村へと続く道を進んだ。
道の横には、水路があり畑や田んぼに水を供給している。
俺たちに気づいた人々が、畑の中や田んぼのあちこちから手を振っている。
ああ。
俺は、自然と口許が緩んでくるのを感じていた。
帰ってきたんだな。
トカゲの谷の香りがする。
それは、少し甘いようなグルの花の香りだったり、麦のみずみずしい緑の香りだったりする。
グルの木は、村の回りに植えられていてそこここで白い花を咲かせている。
トカゲの谷の村へと着くとライディアは、その大きさにまず驚いていた。
「ここは、村じゃない。町だろう?」
確かにね。
最初のコメントを投稿しよう!