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5ー7 きてくれてありがとう
ライドウの荷馬車がガタガタと揺れながら進んでいくといよいよ集落が見えてくる。
「これが、お前たちの村、か」
ライディアがはっと息を飲むのがわかった。
一面の緑の中に浮き上がってくる村の町並みは、整然として整っていて白い壁に赤茶色の屋根が美しく映えている。
村の中へと入っていくと建物の間を流れている水路があり豊かな清みきった水が流れている。
村の中央には、一際大きな風車がたっていてゆったりと回っている。
「なんて、美しい」
ライディアが呟いた。
俺たちを乗せたライドウの荷馬車は、村の広場へと向かった。
広場には、クローディア母さんとティミストリ父さんが待っていた。
「おかえりなさい、みんな」
「ただいま!母さん」
俺たちは荷馬車から飛び降りるとクローディア母さんに抱きついた。
クローディア母さんは、俺たちを抱きしめ頭を撫でてくれる。
「みんな、よく無事に帰ってきてくれたわね」
クローディア母さんは、俺たちの顔を一人づつ確かめるかのように覗き込んでは、頬擦りした。
ライディアは、一人だけぽつんと離れたところから俺たちのことを見つめていた。
「あなたがライディア?」
クローディア母さんは、ライディアに気づくとにっこりと微笑みを浮かべて手を差し伸べた。
「噂は、クロージャーからきいているわ。みんながお世話になって」
「そんな、お世話なんて」
ライディアは、頬を少し赤く染めてうつ向いた。
「私の方こそみんなに世話になっています」
クローディア母さんは、ライディアの方へとゆっくりと歩みよった。
「トカゲの谷しか知らなかったこの子たちに新しい世界を見せてくれたのは、あなたでしょ?」
「それは」
ライディアが少し涙ぐむ。
「私の我が儘でみんなが迷惑しているのではないかと思って・・」
「ライディア」
クローディア母さんがふわりとライディアを抱きしめる。
「この子たちに大きな世界を見せてくれてありがとう」
「!」
ライディアがクローディア母さんの胸に顔を埋めて涙を流した。
「私は、私は、みなに助けられるばかりで・・」
「そんなことはないわ」
クローディア母さんは、優しく囁いた。
「トカゲの谷にきてくれてありがとう、ライディア」
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