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5ー9 最高の思い出
その日の夕食の時にティミストリ父さんから聞いた話しによれば今年の収穫祭に婚礼の儀式を行うカップルは7組。
結婚したカップルは、両親のもとを離れ新しい家を作る。
こうしてトカゲの谷の村は、大きくなっていく。
マッドモウの子供を十分に大きく育てるのには、熟練のテイマーでも1年はかかる。
俺やリリウスもそろそろマッドモウの育て方を学ばなくてはならない年頃になっているのだが、俺たちは、魔法学園に通っているためマッドモウの育て方を学ぶことができていない。
そのため俺たちが適齢期に結婚できないのではないかとクローディア母さんやティミストリ父さんは、心配していた。
だから、せめて休暇でトカゲの谷に帰っているときだけでもマッドモウの世話の仕方を学ぶために牧場へと通うようにと命じられた。
俺は、午前だけ牧場に行き午後からは自由に行動することを許された。
それは、トカゲの谷の発展のために必要だからだ。
しかし、ティミストリ父さんは、このままでは俺がいい嫁をめとることができなくなると嘆いた。
すると、エディットがティミストリ父さんに思わぬことを申し出た。
「もしもクロ様によいお相手がみつからなければ私をお嫁に貰っていただけないでしょうか?」
マジですか?
俺が驚いて言葉を失っているとクローディア母さんが満面の笑みを浮かべた。
「わたしもそうなればいいと思っていたの」
こうして俺とエディットは、婚約することになった。
後でライディアに訊いたらライディアにも婚約者がいるらしい。
「会ったこともない異国の姫」
だとライディアは、俺に話した。
それって政略結婚ってやつですよね?
ライディアは、よその国に婿にいっちゃうわけ?
てっきり俺は、ライディアはラダクリフ辺境伯のもとで彼の右腕になるものとばかり思っていたんだけど。
いつまでも一緒だと思っていたのに。
俺は、不意に寂しさを覚えていた。
そうか。
俺たちが一緒にいられるのは今だけなんだな。
俺は、この夏を忘れられない思い出にしようと決意した。
俺たちが友だちでいられる残り少ない夏だからな。
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