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5ー10 2人の婚約者ですか?
ライディアは、リリウスと一緒にマッドモウの世話をしたり田畑の手伝いをしたりととても王子様とは思えない毎日をトカゲの谷で過ごしていた。
俺たちは、時々は午後から剣術の鍛練をしたり、魔法の勉強をしたりしていたが、だいたいを普通のトカゲの谷の子供と同じように暮らしていた。
俺は、いつまでこんな風に一緒にいられるのだろうかと思っていた。
ミツの木の汁を集めたり、森に薬草を採りに行ったり。
時には、他のトカゲの谷の子供たちと一緒に水路で泳いだり。
この夏は、俺たちの子供時代の大切な思い出になるだろう。
いつかきっと、この日々を懐かしく思い出すときがくる。
それまでは、今を楽しもう。
俺たちがトカゲの谷で夏を満喫していた頃、谷に思わぬ客がやってきた。
突然、巨大な竜が飛来したのだ。
それは、ラダクリフ辺境伯のところの飛竜騎士団の竜だった。
竜は、村の広場に降り立った。
竜に騎乗していたのは、騎士ではなくオウラだった。
「ライディア殿!クロージャー!」
「オウラ?」
ライディアは、オウラのもとに駆け寄ると驚きを隠さずに訊ねた。
「なんで、ここに?」
「もちろん、ライディア殿の警護のためだ」
オウラいわく、ラダクリフ辺境伯からライディアの様子を見てくるようにと正式に命じられたのだという。
オウラもまた初めて見るトカゲの谷に目をみはっていた。
「こんな豊かな村がこの森の中にあったなんて」
オウラは、しばらくの間トカゲの谷に滞在することになった。
その夜、トカゲの谷では、オウラを歓迎する宴がひらかれた。
トカゲの谷の者たちが初めて目にした他の竜人族だ。
オウラは、その美しさも相まってみなの注目の的だった。
その宴の席でティミストリ父さんが俺がエディットと婚約したことをオウラに話したことが問題の始まりだった。
俺が婚約したことを知ったオウラは、突然ティミストリ父さんに言ったのだ。
「私もクロージャーの妻になりたいのだが」
マジですか?
俺は、口に含んでいたお茶を吹いてしまった。
「でも、クロ様の婚約者は私です!」
珍しく強気で主張するエディットにオウラが話した。
「私の一族では、一人の男が3人までなら妻を持つことができることになっている。この谷の者も竜人族なら同じ掟が適用されてもいいのではないか?」
「それは」
エディットが困惑した様子でティミストリ父さんを見た。
ティミストリ父さんは、少し考えていたがオウラに応じた。
「クロージャーなら2人の妻を持つのにふさわしいかもしれんな」
はい?
俺は、ちらっとエディットの方を窺った。
エディットは、なぜか納得した風で頷いた。
「そうですわね。クロ様ほどの方なら2人の妻がいても当然です」
そういうわけで、俺には、2人目の婚約者ができてしまった。
ティミストリ父さんは、俺に笑顔で言い放った。
「クロージャー、お前は、花嫁2人分のマッドモウを育てなくてはいけないぞ」
マジかよ!
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