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6 ダンジョンと魔王
6ー1 どんな食べ物だ?
夏が終わる頃に俺は、8才になった。
といっても精神的にはおっさんだけどな。
トカゲには、誕生日を祝うという習慣はない。
そもそも誕生日自体がはっきりとしない者が多いし。
ただクローディア母さんが夏の終わる頃に俺を産んだと言ったのでたぶんこの頃に俺は産まれたのだろうというだけのことだ。
エディットとオウラは、俺の誕生日のプレゼントに2人からということで竜の鱗で作られた腕輪を贈ってくれた。
これは、エディットとオウラの念の込められたお守りで、なんでもどんな攻撃も一撃だけは俺の身代わりになって防いでくれるというものだ。
俺がこの腕輪を使うことがあるのかはわからないけど、そんなことないことを祈っている。
俺は、このお守りをありがたく受け取って身に付けておくことにした。
だって、女子からのプレゼントを貰うのなんて母親以外からは初めてだったしな。
こうして俺の夏は終わった。
魔法学園に戻った俺を待っていたのはロナードと奴によってめちゃくちゃに汚された部屋だった。
ロナードは、夏休み帰省せずに寮に残っていたらしい。
俺は、深いため息をつくと部屋の掃除をして、ロナードの奴を風呂に入れた。
やっと片付けて部屋でくつろいでいるところへココがやってきた。
ココは、満面の笑みを浮かべて俺の手をとった。
「我が心の友よ」
「なんだ?」
俺は、薄気味が悪くってココの手を振り払うと訊ねた。
「なんの魂胆だ?」
ココは、よくも悪くも商人の子だ。
常に利で動く。
こいつがニコニコして近付いてくるということは、それだけの理由があるということだ。
「つれないな」
ココが叱られた犬のような表情を浮かべて俺を見た。
「親父がお前の新作スウィーツのパフェとやらのこと楽しみにしてるって言ってたぞ」
「ああ」
俺が頷いた。
ガタガタっと音がしてロナードの机の辺りに積み上げられていた本が崩れた。
俺たちの話を聞いていたらしいロナードが口を挟んでくる。
「ぱふぇ、だって?」
ロナードは、俺に詰め寄ってきた。
「それは、いったいどんな食べ物だ?」
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