朝食はパンで…

2/2
前へ
/23ページ
次へ
慎が俺をぎゅっと抱きしめてくれる。 『お礼なら、俺の方こそ。俺を受け入れてくれてありがとう。好きだって言ってくれてありがとう。抱かれたいって思ってくれてありがとう』 「クス…あんなに俺を落とすって自信満々だったくせに?」 『あんなの強がりだよ?ホントはあんま自信なかった。和弥がモテてるの知ってたし、こないだまで彼女がいて、女の子が好きなのも知ってたから。けど、どうしても和弥が欲しくて必死だったんだ』 「うん…わかってる。俺を見つけてくれてありがとうな。ちゃんと責任とって最後まで面倒見ろよ?」 『もちろんです、誓います』 「じゃ、誓いのキスして」 ちゅ…また、止まらなくなるから… 「はい終了、コーヒー。腹へった」 『ふふ…了解』 俺たちは簡単な朝食…と言ってもトーストに数種のジャム。トマトのサラダにコーヒーとヨーグルト。 ゆっくりと幸せな朝を噛み締めながら、今日観に行く映画のリサーチをしてた。 【ピンポーン】 『ん?誰だろ?』 「出ろよ」 慎が部屋からインターフォンに出る。 俺も何となく覗く。 【はい】 【あの〜、B組の宮野です。実は玄関前まで来てます】 【はぁ?ちょっと待って】 「俺…隠れとくから話しろよ…昨日のラブレターの…件だろ?」 『はぁ…面倒だな、じゃ、寝室にいてくれるか?すぐ終わらせるから』 「うん…ごゆっくり…あんま傷つけんなよ?」 『わかってる』 パタン… あ…そっか…防音完璧だから声も聞こえないし、様子を伺うこともできないのか。 しばらく、着替えたり慎の本棚をあせって時間を過ごしてたけど、あまりにも長いから心配になってそっと覗いた…のがいけなかった。 「は?」 慎と宮野がキスしてたんだ。 しかも慎が顔を赤くして…ソファで宮野を膝の上に乗せて…その状況で慎と目があった。 「悪い…邪魔した」 俺は自分の荷物を掴み、何も言わず、何も聞かずに慎の部屋を出た。 慎の声が聞こえたような気がしたけど、振り返る勇気がなかった。 宮野が可愛かったんだ。背中からでもわかる華奢な身体、慎に覆い被さってても違和感が無かった。 俺には出来ない、あんな風に可愛らしく膝に乗ったり…なんて…出来ない。 俺は自宅近くの公園で、ジュースを買ってベンチで反芻した。 今朝まではこれまでにないほど幸せだったのに、一気に突き落とされたな。 もう笑うしかない。 携帯のバイブレーションが止まらない、着信もメールも全部…慎だ。 俺は静かに電源を切った。 デートしたかったな、一緒に映画観たかったしカフェでお茶してさ…買い物して… ポトリ…ポトリ…と涙が落ちる。 俺が恋愛事で泣くなんてな、笑っちまう。 夢だったんだ…そう思う事にした。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加