好きだから嘘ついた

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好きだから嘘ついた

「ただいまぁ…」 【カズ、どこ行ってたのよ?慎くん来たわよ?すごい剣幕で、勘違いさせてしまったって謝ってたけど…なんかあった?】 「なんでもない…慎とは最初から何も無かった事にする」 【ちゃんと話したら?慎くんはあんたの事すごく愛おしそうな目で見てたから、ホントにカズの勘違いじゃないの?】 「母さんの書く小説の中でもあるあるな事だよ、もう思い出したくない。部屋にいるから…あと、もし慎が来ても取り継がないで」 【わかった。でも話ぐらい聞いてあげなさいよ?】 俺は自分の部屋に籠り、ベッドに横になる。明日が日曜日でよかった。少なくとも顔を見ないで済む。 【ピンポン】 【はーい、あら慎くん…】 ドクンドクン… 『和弥は?帰って来てますか?』 【ええ、さっき帰って来て部屋にいるわ】 『ちーちゃん、和弥に会えますか?』 【うーん、何があったか知らないけど今はやめた方がいいと思うよ?あの子あんな形して頑固なの】 『そうですか…和弥に謝って誤解を解かないと…ちーちゃん、そこの公園にいるから落ち着いたら出て来てって伝えてもらえますか?』 【伝えなくても聞いてるわよね?カズ?】 『和弥…ごめん…俺…待ってるから、話だけでも聞い…』 「帰れ!帰れよ!お前の顔も見たくないし、声も聞きたくない!」 『ちーちゃん…ごめんなさい…大切な和弥を傷つけてしまった。せっかく…俺の気持ちに寄り添ってくれたのに…』 【慎くん…大丈夫。時間はかかってもきっと伝わるわ。丸く収まるかはわからないけれど…さ、帰って休みなさい。慎くん、ひどい顔してるわ】 『少し公園で休んでから帰ります、お邪魔しました』 【全く…青春してるわねぇ】 コンコン 【カズ…何があったか知らないけれど…慎くん泣いてたわよ?大切なカズを傷つけてごめんなさいって私に謝ったのよ?あんな子があなたを裏切るとは思えないんだけど?】 「母さん、わかってるんだ。アイツが俺を裏切らないって事は…けど…アイツの隣には俺じゃなくていい…」 【ふぅん…じゃカズは慎くんを他の誰かにあげちゃうんだ?それでいいんだ?】 「はぁ…仕方ないだろ?宇野って言ってさ、小柄で華奢で可愛らしい子なんだよ。キスしてるとこ見たんだ。俺よりお似合いだった」 【でも、慎くんが好きなのはカズなんでしょ?慎くんの気持ちは無視するの?】 「あんな可愛い子に言い寄られたら、心も動くだろ?」 【じゃ、その事をちゃんと慎くんに言ってあげなさい。このままじゃダメよ?公園で待ってると思うわ】 「そっか…そうだな。このままじゃダメだな。ちゃんと別れないとあのふたりがくっつけないか…行ってくる」 【全く…好きなクセに、好きだから…うん…いいネタだわ】
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