41人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の痛い母さん
【いゃ〜ん、最高のカップルじゃない!カズ、よくやったわ!さ、上がってちょうだい。夕飯はもうすぐできるわ】
母はルンルンでキッチンに戻って行った。
「慎?大丈夫か?俺の部屋行こう?」
『いや…なんなんだ?お前のお母さん…怒鳴られるかと思った…』
「あー…部屋で話すわ」
俺たちは二階の俺の部屋へと向かう。
「適当に座って」
『ああ…』
「あのさ、うちの母親…いわゆるBL作家ってヤツなんだ…」
『BL?』
「うん、ボーイズラヴっての…男同士のエロいヤツ…の…小説家」
『は…だから【よくやったわ】って…』
「うん、だから多分そうゆう目でジロジロ見られるけど気にしないで。ごめんな」
『びっくりしたけど、まぁ、コソコソしなくていいってのは嬉しいかも…』
そう言って慎はドアの方をそっと指差す。おれはハッとした…そうか、母親が聴き耳立ててんな。まぁ、想定内。
慎はワザと大きめの声で言う。
『和弥…今夜は俺んちに泊まるだろ?ちゃんと準備しとけよ?』
俺も乗っかる、次の小説のネタになるかもな。
「クスッ…何の準備か言ってくれねぇとわかんない」
『和弥…煽るんじゃねぇ〜よ!っと』
慎はそのタイミングでカチャッと開けた。
母親はきゃっと声を上げて、部屋に雪崩れ込んできた。
「母さん…マジかよ…」
【エヘヘ?次回作のネタになるかと思って】
「何て親だよ…悪いな慎…」
『面白いお母さんだ。俺は嫌いじゃないぞ?』
【慎くんって素敵だわ…ご飯出来たから降りてらっしゃい】
下に降りていくとテーブルには所狭しとご馳走が並んでいた。
『スゲー』
【遠慮しないでたくさん食べてね】
『ありがとうございます。俺、ひとり暮らしなんで嬉しいデス』
【あら、そうなの…ごめんなさい】
『いえいえ、両親は仕事で海外で』
【そう、じゃあいつでもご飯はうちに食べにいらっしゃいね。ふぅん…カズはひとり暮らしの慎くんとこに泊まりにいくんだぁ?】
「母さん…何想像してんだよ」
【だってぇ…うふっ。あなたたちどっちがどっちなの?】
ゲホッ ゴホッゴホッ
俺たちはふたりで盛大に咽せた。
そこからは黙々と食事を済ませた。
『ご馳走様でした、めちゃくちゃ美味かったです。和弥のお母さん、料理上手いですね』
【お口に合って良かった。いつでも食べに来て。それから私のことは“ちーちゃん”って呼んで?】
「おいおい、母さん…」
『ちーちゃん、ご馳走様でした。また食いに来ます』
【遅くなる前に出なさい。カズ、お邪魔じゃないなら2泊して来ても良いわよ】
『良いんですか?俺が独り占めしても?』
【もちろんよ〜付き合い始めでしょ?大事な時期よ?うふふ】
「母さん…もう行くから」
【はーい。行ってらっしゃい。慎くん、カズのことよろしくね】
『はい、もちろんです。ちーちゃん、ありがとう』
【ヤダ〜、可愛いお婿さんね】
「慎、行くぞ。キリがない、じゃ母さん。帰る時連絡するから」
最初のコメントを投稿しよう!