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陽が落ちかけ、とろけるような橙色が校舎を染める頃、僕はもう何冊目になるかもわからないスケッチブックを膝に抱え、陸上部を見ていた。もはや遠藤のフォームは見ずとも再現できたし、細かい変化に気が付くことすら容易かった。僕が顧問であればきっと大いに役にたったことだろう。
僕はそんなことを考えながら、習慣になったフォームのスケッチを繰り返していた。
辺りには紅葉が散らばり、それは夏の抜け殻が太陽から剥がれ、欠片になって落ちているようでもあった。どこからともなく匂ってくるのは金木犀だろうか、確か教室でそんなような話を女子がしていた気がする。
校庭を走る部活の声の響きが、夏よりも感傷的な響きを帯びるようになっていた。あの決意から既に三ヶ月が経過したのだった。
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