僕のペットは人気者

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「ペット」  ノートに大きく刻まれたその字には、発見した瞬間の興奮が詰め込まれていた。更にその下には、続く矢印が添えられ 「ペットの近況→話広げる→盛り上がる」 と書かれている。  こちらは比較的冷静な状態で書いたようで文字が整っている。この結果は分かっていたようで僕の中で意外でもあった。古い手法にも思われたそれは、特に会話の始めで役に立っているようだった。その後の会話の展開はさておき、ペットの話を出すことで会話のきっかけを作ることが出来る。おまけにほぼ毎日、変化を話題にすることが出来るという優れものだった。  下校の時刻を知らせる鐘がなり、僕は立ち上がった。校門の前には既に生徒を見送る教師が立ち、学校を出ようとする生徒と挨拶を交わしていた。僕は鞄を背負いながらその横を通り抜ける。校門を出て少し外れた細い道に入る。  僕はストレッチを軽くして、鞄のベルトをきつく締めた。ここから家までが僕の帰りのランニングコースだ。頭の中に遠藤の走りのフォームを思い浮かべ、僕は擬態する。軽やかに跳ぶイメージ。規則的に腕と足を動かし、短い呼吸でリズムを取るイメージ。そして角を曲がるとき、内側の腕が開くイメージ。僕の擬態は、およそ完璧と言えた。  悦に浸りながら僕は考える。ペット......。僕の家にペットはいない。親に頼んでもそう簡単にオーケーは出ないだろう。小さいペットならいけるだろうか。幸い僕の部屋には押し入れがある。そこに隠せばあるいは......。帰ってから小遣いの金額、それとペットの値段を調べる必要があるな。僕はそこで一旦思考をやめ、肉体の感覚に意識を潜らせていった。
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